●前作について、あなたは意識的に「考えすぎない」レコードにしたと話していました。一方で、自分は本来、何年も時間をかけ、ときには耐え難いほど細部までこだわるタイプだとも言っていました。『ライド・ロンサム』では、どちらのベクトルを選んだと言えますか?「どちらも少しずつあったと思う。まずこういうアルバムを作るにはかなりの忍耐が必要なんだ。さっきも、スタジオに入ってレコーディングを始めたものの、そこから2年くらい作業をしなかったという話をしたと思うけど、それは今作の楽曲たちを完成させるのに必要となるであろう忍耐や配慮を、当時の自分が持ち合わせていないってことを自覚したからだと思う。でも同時に『あのさ、ちょっとイカれたアイデアを思いついたんだけど、この曲でこんなことをやってみたらどうだろうか?』みたいなその場のひらめきだったり、その瞬間に呼応することも大事だったんだよ。アルバムを数週間で録って『これはこれでいいよね』とそのままリリースすることもある。でも今作はそういうアルバムじゃないんだ。本当に長い時間をかけて向き合って、考えて、じっくり思いを巡らせた。ずっと一緒に暮らしていたようなものだよ。何というか、時の流れに耐え得る持久力のあるものを作りたかったんだ。さっと作って終わりっていうものじゃなくてね」 ●『ライド・ロンサム』の歌詞はどの曲においても「君」と「僕」という、ミニマルな関係性を軸に綴られています。そして、ほぼすべては「別れ」、「喪失」をテーマにしていますよね。曲を書いている最中から、ひとつのテーマを追っている自覚があったのでしょうか? それとも後から曲を集めたときに、自分が何度も同じ場所へ戻っていたことに気づいたのでしょうか?「確かに、ある意味どの曲でも、同じような心情が描かれていると思う。つまり自分にとって大切なものを失ったとき、どうやってその喪失を乗り越えていくのか。それは愛する人を亡くすことだったり、ひとつの関係が終わることだったり、あるいは人生の中で大きな変化が続いて、それまで知っていた自分の人生を失ったことを悼んだり。人は誰しも、人生においてそういう時期を経験するよね。何かが大きく変わったり転換したり、何かを失ったりする。そして、そういう状況をどう乗り越えていくのかというのは、とても複雑なことなんだと思う。それまでの健やかさが大きく揺るがされるような出来事を、どうやって乗り越えていけばいいのか。大抵の人は人生のどこかでそういう時期を経験すると思う。このアルバムが掘り下げようとしているのは、そういう心理的、感情的な部分だと思う。乗り越えることが不可能に思えることをどうやって乗り越えていくのか」(以下、本誌記事へ続く)人生そのものの手触りというか。何年にもわたって一緒に演奏してきたミュージシャンたちとの豊かな関係性だったり、僕たちが共有してきた人生。そういうものが音楽の中に入っているんじゃないかと思う
ベックの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
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