日経ライブレポート「キング・クリムゾン」

会場に入るとステージ前方に3台のドラム・セットが並んでいて驚く。ツイン・ドラムという編成はよくあるが、2台のドラムは普通後方に並べられる。3台のドラムが前方に並ぶセッティングは初めて見た。つまり、これがロバート・フリップの考える2015年型のキング・クリムゾンということなのだろう。

3台のドラムによるトリッキーなパフォーマンスがあるわけではなく、むしろパートがしっかり棲み分けられて控えめな感じさえある。しかしドラムが3台あると微妙なリズムのズレ、不思議なビート感が生まれ、聞き慣れた曲が違った表情で聞こえてくる。

今回のツアーは過去の代表曲をたくさん演奏することが話題になっている。世界各地でベスト・ヒット的な選曲は好評で、東京公演もすぐに売り切れ、追加公演も行われた。これまで絶対にやらなかったベスト・ヒットをロバート・フリップがやることにしたのは、3台のドラムというアイディアを思いついたからではないか。過去の曲をやっても、いわゆる懐メロにならない自信があったのだろう。

僕の観た日も「21世紀のスキッツォイド・マン」「エピタフ」「スターレス」「クリムゾン・キングの宮殿」「太陽と戦慄」といった曲が続けざまに演奏され、50代以上の男性が8割以上と思われる満員の客席からは、そうした曲が演奏されるたびに熱い歓声と拍手が起きた。

昔ロバート・フリップは、なぜ「エピタフ」を演奏しないのかという僕の質問に「若者をたぶらかしているみたいな気がするから」と答えた。その若者たちが50代になったことによって封印はとかれたのだろうか。

2015年12月8日、オーチャードホール。
(2016年1月5日 日本経済新聞夕刊掲載)
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