日経ライブレポート「ボン・イヴェール」

ピンク・フロイドみたいだ、とライブ中ずっと思っていた。アメリカのオルタナティブ・ロック・シーンを代表するアーティストであり、モダンなサウンドデザインが評価されている先鋭的な表現者に対してちょっと見当はずれな連想かもしれないが、そう思った。

ボン・イヴェールは、ジャスティン・ヴァーノンによる、ソロ・プロジェクトから始まった音楽ユニット。グラミー受賞の経験があり、2枚目、3枚目のアルバムが全米2位に輝いている。最新のツアーはアメリカではアリーナクラスの会場で数万人を動員している。インディー・フォークと位置付けられることもある彼の音楽はとても自由で前衛的であり、多くの音楽ファンの支持を得ている。

今回のライブを観てその人気の理由は歌メロの素晴らしさにある、と改めて思った。彼はアルバムごとに音楽の世界を変化させてきたが、最新作「アイ、アイ」はとてもメロディアスでポップな作品となった。そのモードが反映されたツアーだからより、歌メロが印象に残ったのかもしれないが、やはり、彼の作品の持つ大衆性を支えているのはメロディーである。

日本の会場はライブハウスだったが、アメリカのアリーナツアーではドラマチックな照明が話題となっていた。その一端が日本のステージでも感じられた。

ピンク・フロイドみたいだと思ったのは、メロディーが最大の武器であり、そのメランコリックな色彩が共通するからだ。まだマニアックなイメージのあるアーティストだが、これから海外と同じスタイルに日本でも大きくなる手応えを感じさせるステージだった。

1月22日、Zepp Tokyo。
(2020年1月7日 日本経済新聞夕刊掲載)
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