創刊30周年を迎えたロッキング・オンJAPAN、について書きました

誰にも言ってなかったのですが、実は、ロッキング・オンJAPANは今年で創刊30周年を迎えました。

佐野元春を表紙にして隔月刊雑誌としてJAPANが創刊されたのが今から31年前の1985年10月。
つまり今年で満30年というわけです。
バンプ・オブ・チキンの結成20周年記念ライブに感動したり、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの結成20年をお祝いする号を作ったり、
はたまたUVERworldのデビュー10周年のツアーに足繁く通ったりしている今年でありますが、
僕らの雑誌にとっても、今年はめでたい30周年のアニバーサリー・イヤーなのです。

 ということで、去年あたりから編集会議のたびに

「JAPAN創刊30周年記念号を創りましょうよ」

「10年に1度しかやれないんだからアニバーサリー号を作るべきです」

という声がスタッフから上がってはいて、やろうかなーとも思っていました。
でも−−−まあまだこれこれから2016年の最後の12月の号までに作らないとも限らないのですが−−−たぶん作らないと思います。
と言うより、作れないと思います。
何故なら、表紙が空いてないからです(笑)。

去年の春あたりから「リリースが少ない月に表紙の空きを見つけてアニバーサリー号にしよっかな」と密かに狙っていたのですが、「空き」なんか全然ない!
それどころか毎月毎月、毎号毎号、表紙巻頭になる候補のアーティストやバンドが3つも4つも重なって、一つに絞るのがひと苦労という状況が続いているのです。
いや、ひと苦労なんてものではありません。
3つも4つもある候補アーティストの中から1つに絞って決定するためだけの会議が2時間も3時間も、毎週毎週続くのです。
そうなんです、いいアーティストやいい作品を選んで雑誌に載せるだけなら楽しいし楽なんですけど−−−そしてそれが音楽雑誌編集者の仕事だと思っている人も多いとは思いますが−−−表紙のアーティストを1つに決める、というのは本当に難しい仕事なんです。

特に去年ぐらいから急激に、表紙候補になるアーティストのリリースや大規模ツアーやアニバーサリーが増えてきたと思います。
みなさんお気づきだとは思いますが、その頃からJAPAN特製の「別冊ブック」が付録としてつくことも増えてきました。
これも、表紙候補のアーティストをなんとか特別な形で特集したい、という「もう一つのやり方」が形になったものです。
それすらほぼ毎月レギュラーになってきているという、去年から今年にかけての状況はちょっと異常なほどです。
嬉しい異常です。

というわけでとても自分達の雑誌の30周年を祝う「JAPAN創刊30周年記念号」が入り込む隙間などないのです。
ちょっと寂しいですが、でも、こんなに嬉しいことはないのです。
音楽シーンが、こんなにも盛り上がっているんだということを実感するからです。
CDの売上では音楽シーンの状況なんてぜんぜん測れません。
でも僕らは、自分達が作っているこのJAPANの表紙争奪戦の激しさで、その盛り上がりと熱さを実感しています。
新世代アーティスト/バンドからベテランまで、音楽シーン全体の温度は高いです。
JAPANも、雑誌不況なんて言われて10年以上経ちますが、むしろ昔よりもぜんぜん元気です。

というわけで、一冊まるごとたっぷり使った「JAPAN創刊30周年記念号」、作りたいですが諦めます。
ここでひっそりとお祝いしたいと思います。
今これ読んでる人だけでも、心の中でおめでとうを言ってもらえると嬉しいです。

僕は23歳の時にJAPAN創刊メンバーとして参加しました。
それ以来ずっと、30年間、この雑誌をスタッフと一緒に作り続けています。
だから「昔は良かった」とかいう自慢話や「あの頃はよかったけど今は…」とかいう愚痴を言う資格は誰よりもあると思いますが、正直に言ってまったくそんな気は起きません。

20代前半のバンドを観に10代のキッズが武道館やアリーナの規模でフットワーク軽く音楽に参加する、
全国のライブハウスが繋いだネットワークに乗ってバンドたちがフットワークよく全国をツアーする、
それが普通のことになっている、
そんな時代はこれまでありませんでした。
バンド以外の音楽クリエイターやフェス文化も含めて、こんなにも多くの人たちが音楽に参加する状況は、今の時代が初めてです。
素晴らしいことだと思います。

次の10年、創刊40年に向かって僕らももっと頑張るから、みんなで音楽シーンを盛り上げていきましょう!

(ロッキング・オンJAPAN9月号『激刊!山崎』より転載)
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