本当に素晴らしかった。このライブの余韻はなかなか消えそうもない。東京公演2日目、新木場STUDIO COASTでのライブを観た。“(Fuck A)Silver Lining”から“Victorious”まで全25曲、ブレンドン・ユーリーの圧倒的な歌声に魅了されっぱなしのステージだった。バンド編成は、ブレンドンのほか、ギター、ベース、ドラム、そしてトランペット・トロンボーン・サックスのホーン隊という全7人。ピアノの弾き語り、シンプルなバンドセット、ホーンと打ち込みのシーケンス、全員加わっての演奏など、楽曲ごとに自在に布陣を変えながらテンポよく進行していく。

今年6月にリリースされた『プレイ・フォー・ザ・ウィキッド』を引っ提げての来日で、この新作が良曲の並ぶ名作と多くの高評価を得ただけに、ライブを楽しみにしていたファンも多かったはず。ブレンドンのハイトーン、ロングトーンは今回も絶好調で、1曲目から突き抜けるような美しい高音のシャウトが繰り出される。そのたびにフロアからもそれに呼応するようにプリミティブな叫びがあがるのが微笑ましくて、会場中の「待ってました」の空気が半端ない。


新作からの“Dancing’s Not A Crime”でソウルシンガーさながらの心地好いグルーヴを生んだ後、“This Is Gospel”でブレンドンがギターをかき鳴らしてロックバンドのソリッドな魅力も見せつけるなど、そのバンドの変遷を変幻自在に感じさせるようなステージングに圧倒され、 “Girls/Girls/Boys”の演奏では、ファンが掲げていいたレインボー・フラッグをブレンドンが受け取り、それを首に巻いて歌ったところなどもグッとくる。LGBTQ支援に積極的な意向を示す彼らしいメッセージだ。


さらに今回のハイライトのひとつに、クイーンの“Bohemian Rhapsody”のカバーがある。グランドピアノを弾きながら歌うブレンドン。完コピかと思わせるほど、オリジナルに引けを取らないエモーション全開な歌と演奏。ラスト、アップテンポにチェンジするパートではブレンドンはグランドピアノの上に飛び乗り、歌への思いを爆発させるかのように力強い歌声を聴かせてくれた。凄すぎる。今、この曲をこのテンションで歌いきれるアーティストはブレンドンしかいないんじゃないかと思ったし、パニック！アット・ザ・ディスコ、つまりブレンドン・ユーリーは、今、彼のキャリアの中で一番自由に輝いているんじゃないかと思う。そう強く実感させられた見事なライブだった。（杉浦美恵）


＜SET LIST＞
1. (Fuck A)Silver Lining
2. Don't Threaten Me With A Good Time
3. Ready To Go (Get Me Out Of My Mind)
4. Hey Look Ma, I Made It
5. LA Devotee
6. Hallelujah
7. The Ballad Of Mona Lisa
8. Nine in the Afternoon
9. Golden Days
10. Casual Affair
11. Vegas Lights
12. Dancing's Not A Crime
13. This Is Gospel
14. Death Of A Bachelor
15. Dying In LA
16. Girls/Girls/Boys
17. High Hopes
18. Miss Jackson
19. King Of The Clouds
20. Crazy=Genius
21. Bohemian Rhapsody
22. Emperor's New Clothes
[encore]
23. Say Amen (Saturday Night)
24. I Write Sins Not Tragedies
25. Victorious