元TNTのフロントマン率いるスターブレイカー、新ALでポップ・メタルとヨーロッパ・エッジのケミストリーが遂に実現。活動はこのまま本格化するか?

元TNTのフロントマン率いるスターブレイカー、新ALでポップ・メタルとヨーロッパ・エッジのケミストリーが遂に実現。活動はこのまま本格化するか?

ノルウェーのポップ・メタルの雄TNTの元ボーカルのトニー・ハーネルとプライマル・フィアのギターの名手マグナス・カールソンのユニット、スターブレイカーの最新作『ディスフォリア』。もともとこのユニットは2005年にトニーのソロ・プロジェクトとして始まったものがマグナスの加入によりスターブレイカーというサイド・プロジェクトへと発展したもので、トニーの驚異のボーカルとマグナスのギターワークにどこまでもエッジとポップの両刃を求めていくユニットなのだ。

このスターブレイカーのファースト『スターブレイカー』(2005)をリリース後に、トニーはTNTからも脱退。2007年には再びマグナスとセカンド『ラヴズ・ダイイング・ウィッシュ』(2008)を仕上げるが、ほぼ同時にマグナスがプライマル・フィアに加入したことで、スターブレイカーとしてはその後の活動の機会を失うことになった。トニーは13年にはTNTにいったん復帰もしたが17年に再び脱退。その17年からマグナスと制作を進めてきたのが、スターブレイカーとしての今回のサード・アルバムなのだ。


もともとTNTでのポップ・メタル路線を推し進めたのはトニーで、ノルウェー・メタルとしてプログレ的な資質を引きずったバンドの感性とアメリカ人のトニーのポップ・メタル感性が融合したところがTNTの魅力だった。バンドは90年代後半からサウンドのオルタナ化を図ったが、その果てに自分たちの原点であるグラム・ロック的なハード・ロックに立ち返ったのが2004年の『マイ・レリジョン』で、ある意味でこれこそが奇跡的な最高傑作となった。というのは、オルタナ化の過程でバンドの音に残ったエッジがそのまま『マイ・レリジョン』のハード・ロックに乗っかったからで、トニーにとってはこれこそがその後、ずっと追求していきたい音になったのだ。

しかし、TNTはかつてのポップ・メタル路線を踏襲することになり、トニーは自分のポップ感性とバンドによるエッジを両立させていくユニットとしてスターブレイカーを見出した。そのコラボレーターとしての役割を、ヨーロッパ・メタルの技巧とエッジを自在に叩きつけてくるマグナスに託したのだ。

そのトニーの希求をようやく10年ぶりに形にしたのが今度の新作で、トニーの直球なポップ・メロディとそれを徹底的に切り刻んでいくマグナスのギターワークとアレンジのケミストリーはあまりにも壮絶にして痛快でもある。まだライブも実現したことがないだけに、これを機に恒久的なプロジェクトになれば本当に喜ばしいことだと思う。(高見展)



『ディスフォリア』の日本盤は1月9日にリリース(海外盤は1月25日)。

詳細はキングレコードの公式サイトで確認することができる。
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