なんだか巨星の訃報が多いと感じられる2016年。悲しいけれど、どんな偉人も寿命にだけは敵わない。だが、鬼籍の一覧以上に今年の音楽シーンで印象深いのは、死という現実も含めて自らのキャリアの終点を見据えた、傑作と呼ぶことさえ軽々しく思える重厚な2枚のアルバム――デヴィッド・ボウイの『★』とイギー・ポップの『ポスト・ポップ・ディプレッション』だ。そして、12月に出るというローリング・ストーンズの新譜はどうなるのかと思っていた矢先に、本作は届けられた。
先日82歳となったレナード・コーエンの最新アルバム。マネージャーに財産を横領されたことがきっかけで近年は再び精力的に活動していたので、つい、2年ぶりの新譜もまだまだ元気なのかと思いきや、いきなり冒頭のタイトル曲で「主よ、覚悟はできています」という言葉がズシリと響く。どうやら制作中に体調をかなり崩したらしく、作業を一時中断していたとのことだ。息子のアダム・コーエンの尽力によって、完成にこぎつけられたのだという。前述した2作と併せ、表現者の人生というものについて考えるためにも、ずっと聴き続けていくだろう。(鈴木喜之)
歌詞も対訳ノートも必読
レナード・コーエン『ユー・ウォント・イット・ダーカー』
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