オールマイティなシンセ・ポップ

ウォーク・ザ・ムーン『ホワット・イフ・ナッシング』
発売中
ウォーク・ザ・ムーン ホワット・イフ・ナッシング
必殺シンセ・ポップ・アンセム“Shut Up And Dance”でブレイクしたウォーク・ザ・ムーンの3年ぶりの新作は、新アプローチがいくつも試された意欲的一作となった。ツェッペリンばりのねちっこいグルーヴに驚かされるハード・ロックもあれば、ファンク・ギターが軽やかに跳ねるR&B、さらにはオートチューンで歪みきったボーカルとモノトーンな旋律のコラボ、ジェイムス・ブレイク以降のベース・ミュージックとシンクロしたナンバーもある。

思いっきりシンセ・ポップに全振りしていた前作と比較すば、遥かに冒険をしているのは間違いないが、このバンドの強さは冒険に際してもきっちり保険をかけると言うか、ポップ・バンドとしての揺るがぬ基準がある点だろう。彼らの80s風と呼ばれるサウンドは、ニュー・ウェイヴやアシッド・ハウスといった80sの尖った前衛としてのそれではなく、もっとベタでわかりやすい80年代のエレ・ポップのリアルに基づいている。トレンドに呼応する反射神経と、盤石の一般性。結局こういうバンドが不特定多数にアピールするポップで勝つんだよなあ……とつくづく感じる一枚。(粉川しの)
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