アルバム『Fantôme』収録の“ともだち”でボーカル共演した
宇多田ヒカルをして「この人の声を世に送り出す手助けをしなきゃいけない」と言わしめた
小袋成彬のデビューアルバム。《雨の渋谷に会話はいらない/言葉は真実を映さない》(“E. Primavesi”)、《愛を紐解く暇もない/体が冷えるまでそばにいたい/だから月が綺麗/だから月が綺麗》(“愛の漸進”)とビビッドに世界を切り取る筆致や、それこそ
平井堅や
小沢健二などポップシーンを彩ってきた男性シンガーに通じる声質もさることながら、彼の歌と楽曲の魅力は何より、不定形で複雑な感情や思考や景色をそのまま、「歌」という概念では追いつかないほどの豊潤さとリアルな揺らぎへと昇華してみせるセンシティビティそのものだ。ここに綴られたパーソナルな物語が映し出すのは、僕の想いであり、あなたの想いだ。
《まだ生きながらえている/なぜ生きながらえている》(“Lonely One feat. 宇多田ヒカル”)――それまで歩んでいた音楽制作の裏方の道から、シンガーソングライターとして珠玉の歌を響かせ始めた才気の、第一歩にして金字塔。(高橋智樹)