取り戻した信頼

スマッシング・パンプキンズ『シャイニー・アンド・オー・ソー・ブライト VOL.1 /LP:ノー・パスト、ノー・フューチャー、ノー・サン』
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ALBUM
スマッシング・パンプキンズ シャイニー・アンド・オー・ソー・ブライト VOL.1 /LP:ノー・パスト、ノー・フューチャー、ノー・サン

先月号のインタビューでビリー・コーガンは「バンドにとっては今が一番幸せなときじゃないかと思う」と言ってるが、残念ながら紅一点ダーシー・レッキーこそ参加しなかったもののジミー・チェンバレンに加えジェームス・イハが戻り、3/4スマパン+07年以来のジェフ・シュローダーとによる『シャイニー・アンド・オー・ソー・ブライト VOL.1/LP:ノー・パスト、ノー・フューチャー、ノー・サン』の仕上がりに大満足してのことと、一聴して納得がいく。

1曲目の“ナイツ・オブ・マルタ”の泣きのツボを押さえた最初のフレーズだけで、長年待ち続けたファンはもちろんのこと、リアルにこの伝説バンドを感じられない人たちをも虜にしてしまう魅力成分がたっぷり詰まっている。ドラマチックで儚げな曲は、いかにもビリーならではで、そこにイハのギターが絡み、ジミーの相変わらず鋭くてタイトなドラムスがバックをしっかりと固める構造は、長き別れを瞬時に忘れさせる。ストリングスやコーラスも加え、悠然と展開するこの曲だけでアルバムの仕上がりの良さが確信となるだろう。

続くストレートなビート・ナンバー“シルヴァリー・サムタイムズ(ゴースツ)”のシャープさも絶妙だ。キャリア30年になるベテランたちにとっては、こうした風通しの良さをむき出しの音にすることの方がいかに難しいか、それを気負うことなくやれているのがバンド・コンディションの素晴らしさを物語っている。

さらにそうした中で重要な核とも言えそうなのが4曲目の“ソラーラ”で、ヘヴィなドラム・サウンドが中央にどっかりと座り、そこからビリーならではの捻れたイマジネイションの広がりが力強く展開される。かつてのグランジやオルタナ感を盛大に織り込みつつ、確実にアップデイトされているところは、今回鍵を握ることとなった共犯者のプロデューサー、リック・ルービンの存在も当然大きい。“マーチン・オン”(6曲目)にも通じるものだが、その昂揚感を癒すかのような次の“エイリアンネイション”のピアノの響きが2018という時代性を記していくあたりの流れも、いま作られたアルバムにふさわしいものだ。

まさかプロレス団体のオーナーがロック界から出る日が来るなんて考えもしなかったが、それもまたビリーらしいと言えばらしい。その彼が同じく先月号のインタビューでは「僕たちはバンドとして、自分たちのブランドに対する世間の信頼を取り戻す必要があるんだ」とも語っている。その目標がみごとに達成されているのは、このアルバムを聴いた誰もが確認することだろう。(大鷹俊一)



『シャイニー・アンド・オー・ソー・ブライト VOL.1 /LP:ノー・パスト、ノー・フューチャー、ノー・サン』の各視聴リンクはこちら

スマッシング・パンプキンズ『シャイニー・アンド・オー・ソー・ブライト VOL.1 /LP:ノー・パスト、ノー・フューチャー、ノー・サン』のディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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スマッシング・パンプキンズ シャイニー・アンド・オー・ソー・ブライト VOL.1 /LP:ノー・パスト、ノー・フューチャー、ノー・サン - 『rockin'on』2019年1月号『rockin'on』2019年1月号
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