今年4月にリリースした1stフルアルバム『だから僕は音楽を辞めた』の続編にあたる作品。前作の主人公である青年の大切な人の名=エルマをタイトルに冠しているほか、それぞれの収録曲は前作の収録曲と対をなすような内容に。前作を踏襲し、ピアノ/エレクトリックピアノを基調としたロックサウンドとなっているが、より多彩になった印象。アシッドジャズ的なノリがある“雨とカプチーノ”などが新しい。全14曲は「青年からの手紙に影響を受けたエルマが手掛けた曲」という設定で、suis(Vo)は「エルマの目から見た青年の心情」と「その過程を経てエルマが新たに抱いた心情」の両方を語る、という非常に難しい域に挑んでいる。前作と比較すると、女性的な柔らかさのあるボーカルになっているほか、去っていった者の「勝手」に対し残された側が思うこと――葛藤、怒り、迷い、願いなど――を声色の微細な違いで表している。ふたりの物語はいったいどこへ向かうのか。その結末はリスナー一人ひとりに託されているのだろう。受け取り手の想像力を掻き立てる初回限定盤の仕様にもこだわりを感じる。(蜂須賀ちなみ)