ノルウェー出身のイーダ・マリアもまさにそんなKYなロックを鳴らすアーティストである。リリー・アレンやM.I.A.、サンティゴールドなど英米の女性アーティストが自分にマッチする新たなる表現方法を画策している中、彼女のアート、つまり彼女のロックンロールはそんなやからの努力を横目に極めて単純明快。3分前後であること、誰もが一発でわかること、踊れて、酒にぴったりで、パーティー気分にさせられること。以上。……なのである。
彼女のデビュー作は芸術的なほどそんな哲学を踏襲していて、無条件に心と体が動かせるロックンロールが詰まっている。だからって一本調子かと言えばぜんぜん違う。「他人が書いた曲は歌えない」という彼女は、音楽理論を専門的に学習していて、そのために笑いから泣きまで、心から湧き出てくる感情をそのまま自然とサウンドに変換できるほど音楽的な語彙が豊富。なので、必要に応じて彼女のロックはワイルドになり、ポップにはじけ、静かになびき、クールに走る。そして、そこには伊達も酔狂もない。あるのは周りをまったく気にしていない24歳の等身大の心情のみ。いつまで経ってもKYでいて欲しい。(内田亮)