我が愛するストーンズ・アルバム『レット・イット・ブリード』50周年記念スーパー・デラックス・エディションは、彼らのリマスタリングでは定評のあるボブ・ラドウィックが手がけたモノラル、ステレオの各音源がLP、SACD/CDのハイブリッドとして収録され、他にも“ホンキー・トンク・ウィメン”などのシングル盤や80ページのブックレット、リトグラフ等々、お宝感たっぷり。
気になる最新リマスターは期待通りとてもシャープで、モノラルでは一体感はありながらも細かい分離が聴き取れるし、ステレオはとくに中域の膨らみが抜群に豊かで、もともと音数が多かったり、凝ったレコーディングでもないから、空間の拡がりや各音の味わいがたっぷり楽しめる。間違いなくこれまででもっとも良い音となった。
“ギミー・シェルター”に始まり“無情の世界(You Can’t AlwaysGet What You Want)”までの全9曲、どれもストーンズ史を飾る名曲揃いだからすごいのはもちろんなのだが、聴く度にまず圧倒されるのは、アルバム全体に流れる異様な緊張感だ。
このときストーンズは間違いなく解体の危機にあった。ミック・ジャガーは大麻所持で逮捕、ドラッグに耽溺していたブライアン・ジョーンズの首を切ったり、新メンバーとして二十歳のミック・テイラーを入れたり、と綱渡りをしながらライ・クーダーやアル・クーパー等、交流の浅い人々も加えてレコーディングとくるのだから、それまでとはまったく違った空気がスタジオにあるのは当然で、音が良くなればなるほどスタジオ内の緊迫感がリアルに伝わってくる。
よく、捨て曲なし、と言われるが、これはその好例の1枚。アルバム体験の少ない世代にこそアルバムとして、通して聴いて欲しい
!! (大鷹俊一)
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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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