チェスター・ベニントンの死から3年が過ぎ、リンキン・パーク周辺が徐々に賑やかさを取り戻している。今年はチェスターが在籍していたグレイ・デイズの新作『アメンズ』発表、さらに本家リンキンの大名盤1stアルバム『ハイブリッド・セオリー』20周年を記念した豪華ボックス・セットも10月に控える中、マイク・シノダも活発に動き始めた。彼がライブ・ストリーミング配信サービスのTwitchを使い、ファンとの共同作業で制作したソロ2作目『Dropped Frames, Vol. 1』を7月10日に発表、その3週間後に続編とも言えるソロ3作目を完成させるハイペースぶり。
前作はボーカル・トラック1曲を含むインスト作だったが、本作は全編インストと振り切った内容になっており、基本はヒップホップ、ダンス/エレクトロ・ミュージック路線を貫いている。鍵盤でゲーム音楽、オーケストレーションなど遊び心や壮大なアレンジを仕込み、形式張らない自由闊達なトラックがずらりと並ぶ。ファンから受け取ったインスピレーションを、マイク自身が創造の泉にして楽しんでいる様が伝わってくるよう。とはいえ、散漫な印象はなく、作品トータルで浮かび上がってくるセンチメンタルな物語性には本家との類似を見出せなくもないし、ここに次のステップを見せるアイデアの種子が眠っているのかもしれない。そのように、様々なイマジネーションを駆り立てられる興味深い1枚なのだ。またフィーチャリングにはイリース・トルー、前作に続きダン・マヨ、そしてマニー・マークの3名を迎え、それぞれのキャラを立たせたトラックも面白かった。全体を何回も通して聴くにつれ、スピリチュアルなエモーションを掻き立てられるサウンドに不思議な魅力を感じた。 (荒金良介)
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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
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