7年ぶり入魂の最新作『ギガトン』を発表したパール・ジャムは、世界ツアーが延期となってしまったが、バンドは休止することなく、それ以外の活動を勢力的に行っている。バンド初のライブから30周年を祝ったり、この伝説の『MTVアンプラグド』の音源もとうとう発売されることになった! 1992年3月16日に収録されたこの番組は、1991年9月に開始し、148公演行なって92年6月まで続いた、バンド最高傑作の1枚『テン』ツアー中、つまりグランジ・ムーブメント真っただ中に収録された。これまでは限定発売で入手困難だったが約30年経過してようやく堪能できることになったのだ。収録曲は7曲だがセットリストは完璧だ。“アライヴ”も“ジェレミー”も“イーヴン・フロウ”もあり捨て曲はゼロ。ただ何より驚くのは、30年も経過しているとは思えない、彼らの今も変わっていない部分の方だ。アンプラグドなので削ぎ落としたサウンドと言えるのかもしれないが、実際は3人のギター、ベースはエレキと大きく変わりがない。より鋭利とか緊迫していると書くべきなんだろうが、例えばエディの声に至っては、昨日のライブだと言われても納得できるくらいだ。映像の方では確かに全員若いし、髪の毛も長い。でも音だけ聴くと2年前に観たライブと大きく変わらない。実際バンドはこれまでもライブでそのアレンジを大きく変えようとしていた記憶もなく、ずっとこのままなのだ。エディが以前演奏する度にその曲が出来た瞬間を思い出すと言っていて納得したが、彼らはその怒りも、混乱も、サウンドも全く風化させることなく、この伝説に30年間も魂を吹き込んできたのだ。そんなバンド他にいるだろうか? それに何より感動する。現在も最もチケットが取れないアメリカ一のライブ・バンドである理由を改めて思い知る。(中村明美)
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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。
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