『One Last Kiss』のリリースから約3ヶ月、早くも新曲が届く。アニメ『不滅のあなたへ』の主題歌として、すでにオープニングで流れている“PINK BLOOD”の配信リリースだ。浮遊するエレクトロサウンドとともに始まる《Pink blood》の反復から《誰にも見せなくても／キレイなものはキレイ》と続く冒頭に触れるだけで、この曲の不思議なあたたかみが感じ取れる。独特の譜割りで言葉をあえて無機質に表現する歌が、逆に感情に強く訴えかけてくるのだ。もちろん宇多田ヒカルの歌声だからこその温度感、そしてサウンドプロダクトのなせるワザではあるが、今作は歌詞がいつにも増して心をまっすぐに突く。生き方に自信を持てない、自己評価の低い自分に対して、やわらかく包み込むように、けれど強く明快な言葉で《自分の価値もわからないような／コドモのままじゃいられないわ》と歌う。こちらの安い感傷が見透かされているような気がしてしまう。けれどこの歌はとてもあたたかい。癒されて、立ち上がる力を与えてくれる。月並みな表現だが、真にそんな説得力を持つ歌はそうそうあるものではない。（杉浦美恵）

『ROCKIN'ON JAPAN』7月号より