年代ごとにまとめられたデフ・レパードのボックス・セットの第3弾。この『CDコレクション : VOL.3』は、2000年代の作品を中心に構成されている。ポップな曲やアコースティックな曲が多くミディアム・テンポばかりだった『X』(02年)はセールスがいまひとつ伸びず、カバー集『YEAH!〜イエーイ!』(06年)を経てハード・ロックに回帰した『ソングス・フロム・ザ・スパークル・ラウンジ』(08年)でバンドは復調した。そんな試行錯誤の時期が、まとめられている。
今回の6枚組にはそれらアルバム3作のほか、デフ・レパードを牽引するジョー・エリオットが選曲したボーナス・ディスク3枚が収録されている。そのうちディスク4はB面曲集であり、なかでも興味深いのは、ディスク5・6だ。5はスタジオ録音、6はライブ録音のカバー集で『YEAH!〜』の続編的な性格を持ち、これらには2000年代以外の音源も含まれている。一連のカバーを聴くと、彼らがどんな影響関係から自分たちの音楽性を育んできたかがわかるだろう。
ローリング・ストーンズ、キンクスなど60年代のロックンロール・バンドからデヴィッド・ボウイ、T・レックスなど70年代のグラム・ロックへというのがメンバーの好みの基本線だが、ジェフ・ベックのフュージョン曲やストゥージズの荒々しいナンバーもとりあげていた。これら先人からロックの演奏のダイナミズムや緩急を学び、80年代以降のエレクトロニック感覚を融合したのがデフ・レパードのサウンドだったといえる。
そしてボックス・セットは、クイーンのブライアン・メイ、モット・ザ・フープルのイアン・ハンターとの各共演で締めくくられる。先輩への敬意を忘れない後輩なのだった。(遠藤利明)
ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
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