ルークとTOTOの輪廻の証

スティーヴ・ルカサー『アイ・ファウンド・ザ・サン・アゲイン』
発売中
ALBUM
スティーヴ・ルカサー アイ・ファウンド・ザ・サン・アゲイン

再始動TOTOでもタッグを組むジョセフ・ウィリアムスのソロ作『デニズン・テナント』と同時発売の今作について、スティーヴ・ルカサー自身「2枚のアルバムの曲をシャッフルして聴けば、TOTOのアルバムに近い形になると思うよ(笑)」と語ったという。

メンバー・チェンジを繰り返す中で唯一常時メンバーとして在籍し、TOTOという巨大な音楽共同体との間で終わりなき音の輪廻を描き続けてきたルークの表現者としての矜持とエモーションを、その発言は如実に物語っている。

前作『トランジション』以来8年ぶりのソロ・アルバムとなる今作。盟友デヴィッド・ペイチをはじめ、ジェフ・バブコ(Key)、グレッグ・ビソネット(Dr)、ヨルゲン・カールソン(B)、さらには新TOTOのライブ・メンバーでもあるジョン・ピアース(B)といったルークゆかりの凄腕メンバーの顔ぶれからも「TOTOスピンオフ」的な気迫は濃密に窺える。

が、スリリングな疾走感に満ちた“アロング・フォー・ザ・ライド”も、ジャズ/ポップ/ブルースなど多彩な音像が緩急自在に押し寄せる10分超の“ザ・ロウ・スパーク・オブ・ハイ・ヒールド・ボーイズ”も、さらにはゲストにリンゴ・スター&ジョセフ・ウィリアムスを招いた“ラン・トゥ・ミー”も、「全曲クリックなし&通しリハ1回のみで一発録り」のライブ・レコーディングを敢行。聴く者の交感神経を心地好くまさぐるようなあの妖艶なギター・ソロを随所で響かせながら、極限のテンションを自ら楽しむかのように意気揚々と楽曲とサウンドを紡ぎ出していくルーク。

ルーク&ウィリアムスの両ソロ作のツアー企画がTOTO再生のきっかけになったことも含め、「一挙手一投足のすべてがTOTOになる男」の象徴的な快盤。(高橋智樹)



ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
ご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。

スティーヴ・ルカサー アイ・ファウンド・ザ・サン・アゲイン - 『rockin'on』2021年7月号『rockin'on』2021年7月号

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