19年の欧州ツアーの舞台裏を追ったドキュメンタリー映画『オール・アイ・ノウ・ソー・ファー』を、今年5月に発表したばかり（日本ではAmazon Prime Videoにて独占配信中）のP!NK。
英国ウェンブリー・スタジアムでの白熱のステージをクライマックスに据えたこの映画は、肝っ玉母ちゃん＝P!NKのユニークすぎる「子育て奮闘記」を軸に描かれてて、ファン必見の感動作なのだけど、ひとつ残念なのは音楽シーンが少なすぎたこと――いわゆるライブ映画ではなく、密着ドキュメンタリー主体の構成だから仕方ないけど、途中で挿入されるライブのチラ見せがどれもこれも多幸感に溢れてるもんだから、「そこまで撮ったなら全部観せてよ！」という気になるのだ。
と、そんなあなたのために企画されたのが、同映画の「公式サントラ」と銘打たれた本作。“ファンハウス”や“フ××キン・パーフェクト”など、前述のウェンブリー・スタジアム公演で披露された新旧ヒット曲のフル・バージョンをメインディッシュとしつつ、それだけでは終わらない。
09年に別会場で収録されたクイーンのカバー×2（それもなんと“ボヘミアン・ラプソディ”＆“伝説のチャンピオン”だ）、スタジオ録音の新曲×2、さらにはMTVビデオ・アワーズ授賞式で愛娘に捧げたスピーチまで収録されていて、盛りだくさん。いい意味のわちゃわちゃ感というか、「ついでにこれも持ってきな！」的サービス精神がいかにもP!NK姉御らしい。
ハイライトはシンディ・ローパーの名曲“タイム・アフター・タイム”の号泣カバーと、あとはやっぱり“ソー・ホワット”。音だけだと「？」かもだけど、史上最長クラスの飛行距離だっただろう「スペクタクル空中ショー」の衝撃映像は、映画版の方でぜひどうぞ。（内瀬戸久司）
ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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『rockin'on』2021年8月号
