この道を明日へと続けるための音楽

リーガルリリー『Cとし生けるもの』
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ALBUM
リーガルリリー Cとし生けるもの
約2年ぶりのフルアルバム。タイトルにある「C」の文字は、「炭素」の元素記号を意味しているという。結びつき方次第で黒鉛にもダイヤモンドにもなり得る、炭素。それをこのアルバムの描くものと重ねたところに、今のリーガルリリーの、人や世界を見る眼差しが表れている。

《中央線は今日もまた、叶わぬ恋を繋げてた。》と“中央線”で歌えば、“教室のドアの向こう”では《中央線は今日も人が死んでしまったね。》と歌う――これが今、彼女たちが見つめる世界である。喜びの隣に深い悲しみがある。恋の隣に喪失が、記憶の隣に忘却があり、祈りの隣に呪いがある。この世界の「解決されなさ」を前に、それでも彼女たちは、《ハイな気持ちを続けて鳴らせれば、きれいなおとになる。》(“きれいなおと”)――そうやって、連鎖する音に未来へ向かう意志を込める。ここにあるのは、破壊ではなく再生。かつて歌った《おんがくよ、人を生かせ》という言葉の先にあるもの。揺れ動く視点と流れていく時間を精緻に奏でることで、この世界の複雑さを慈しみ、肯定する……そんな勇敢な意志が見える、成熟を感じさせる一作。(天野史彬)

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