頻繁に用いる言葉だが、その意味を的確に捉えるのが実はかなり難しい「豊かな表現力」ということを鮮やかに理解させてくれるのがReolだ。今作の1曲目“SCORPION”に関しては、ダイナミックに躍動するトラックを自由自在に乗りこなして放つ歌が抜群に冴えている。百戦錬磨のラッパー級の鋭いビートの捉え方をしながら駆け抜けていくこの歌声は、曲タイトルになぞらえるならば、尾の部分を巧みに動かしながら必殺の一刺しを喰らわすサソリのよう。コンプレックスや過去の苦い経験も含めて作り上げられた「自分自身」として勝利を掴む姿勢を示す歌詞が、パンチの利いた歌声の響きによっても生々しく浮き彫りにされている。その一方、2曲目“secret trip”の歌を端的に言い表すならば抑制を効かせたスタイルなのだが、耳にした瞬間に胸いっぱいに広がる情感がものすごい。歌声に触れた心の中に温かな慈愛が広がっていくこの感覚は、ぜひ実際に味わっていただきたい。このような「豊かな表現力」の持ち主だからこそ、彼女は言語の違いに阻まれることなく海外でも支持されているのだと思う。(田中大)
曲と完璧に同化して輝く歌
Reol『COLORED DISC』
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SINGLE