『ROCKIN'ON JAPAN』がお届けする最新邦楽プレイリストはこちら
前作『KOE』以降、ヒップホップやK-POPを愛聴し現代的なビートミュージックをポップスに昇華するアプローチを追求してきた佐藤千亜妃の集大成的アルバム。そのアプローチの中では幼少の頃から聴き込んでいたという宇多田ヒカルの“Automatic”をサンプリングしたトピックが光るだけでなく、日本語の音節の扱い方やメロディへの乗せ方においても引き継いでいるものがあることを随所で感じさせる。アルバム全体を通して過去と現在を行ったり来たりする心情を描き、音楽性においても過去と現在をつなげる中で、宇多田のエッセンスを取り込みながら現代の女性ボーカリストの代表的存在である幾田りらを起用したことも意味深い。タイトルは『BUTTERFLY EFFECT』で、過去の些細な幸福も喪失も自身に大きな影響を生み出すことがある事実や、一人ひとりの小さな変化が世界に色を増やすことを示唆し、心に覆いかぶさるものや誰にも言えない秘密を少しずつ解いていこうとする言葉が、佐藤らしい筆致で描かれている。(矢島由佳子)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年8月号より抜粋)
『ROCKIN'ON JAPAN』8月号のご購入はこちら
他ラインナップはこちら