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作詞作曲を手掛けるくぅは、逃げたくなったり隠したくなったりする弱い気持ちにも誠実に向き合い続け、そのプロセスをありのまま表現する人だと思う。そんな彼の「自身の闇」に対する解像度は凄まじい勢いで上がっており、描く世界はどんどん現実味を帯びてきている。今作では、《結婚とか本当はしたかった》《僕の子供が出来たら》と、世間的には幸せの象徴とされるイベントと、それらに縁のない自分との対比によって、曲中に漂う生活感と諦念感が一気に色濃くなる。しかしNEEはいつも、ただ絶望と諦めを歌うだけではない。《手を繋いで 僕を信じて》《今を愛してみて》と、希望や未来を感じさせる言葉が時折混ざるのが人間臭くて愛しい。人の感情は本当に複雑でわがままだ。諦めたいのに期待する、ひとりになりたいけど孤独は怖い。NEEはそんな相反する感情をごまかさず、相反するまま曝け出してくれる。だから彼らの歌は信じられるし、どうしようもない生活も、矛盾だらけの自分も、そのまま愛したいと思えるのだ。(藤澤香菜)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年11月号より抜粋)
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