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「自分を表現する」ということは難しい。意見を主張したくても、同調圧力に負けて周りと合わせてしまう自分に嫌気が差したり、逆に個性を出さなきゃと思っても、平凡な自分に失望してしまったり。そんな均一的な存在となってしまった自分たちのことを「ホムンクルス=人造人間」だと谷口喜多朗は歌う。しかしそれは決して皮肉などではなく、《ありふれた僕もいいもんだ。》と思い悩みながら生きることを肯定する。LRに振られたさまざまな人の声――自分自身を見失わせる、思わず耳を塞ぎたくなる周囲からの雑音のような声を表現していると初めは思っていたが、実は一つひとつの声が「僕だって/私だって苦しい」という叫びで、劣等感を抱えているのは自分だけじゃないという励ましなのではないかと感じたのは私だけだろうか。無理に周りと違う自分を演出しなくても、つい誰かの意見に合わせてしまっても、そのくらいで自分が失くなったりはしないと、張り詰めた心を優しく解きほぐしてくれる歌だ。(有本早季)(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年12月号より抜粋)
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