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ファンタジー作品とドキュメンタリー作品。対極なものとして扱われるふたつには共通点がある。ひとつは物語であること、そしてもうひとつは登場人物が自分の世界で心血を注いで生きているということだ。誰かの生き様や涙は、人の心を強く動かす。それは創作であろうがリアルであろうが変わりはない。今作に収められた14の物語にも、一人ひとりの体温や息遣い、美学と信念が瑞々しく躍動している。各曲の主人公に芽生える愛情や友情、葛藤や不安などをユーモラスかつロマンチックな筆致で、鋭く核心を突く歌詞。それをダイレクトに伝えるのがギターロックのセオリーに留まらないサウンドデザインである。バンドサウンドならではのざらついた感触やインパクトと、鍵盤やホーンの煌びやかな音色のコントラストは夜空と星のように気高い。ライブで培ってきた表現力が、曲にしたためられた感情や情景により実態と奥行きを持たせている。4人が磨き続けたポリシーが美しく花開いた、説得力に富んだ作品だ。(沖さやこ)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年1月号より抜粋)
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