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10周年のアニバーサリーイヤーとなった2023年、ミセスは文字通り八面六臂の大活躍だった。とくに年末にかけての勢いはものすごいもので、当然といえば当然だが、僕の周りでも突然「ミセスが好き」と口にする人が増えた印象がある。それも多くが僕と同年代の大人たち。素晴らしいことである。『ANTENNA』というアルバムを聴いて、大森元貴が人生をかけて歌ってきたことにますます説得力と真実味が宿ってきていることを感じる人はたくさんいると思うが、その説得力と真実味が世代も文化も超えて人々の心を揺さぶっているのである。異常に肉体的な最近の大森の歌を聴いていると、なんだか生命の神秘に触れたような気分になる。この“ナハトムジーク”はそんな今の彼だからこそ歌える生への賛歌だ。暗くて、痛くて、矛盾にまみれた世界で、なぜ生きるのか、なぜ愛してしまうのか。そんなパラドックスを、大森の歌は気高く力強い響きで乗り越えていく。“Soranji”のメッセージをさらに研ぎ澄ましたような歌詞も圧倒的。(小川智宏)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年3月号より抜粋)
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