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ボーカリストとして日本の音楽シーンの常識も固定観念も刷新する先駆者でありながら、ここまでアーティストとしてのエゴを歌に漂わせない表現者が他にいるだろうか? 楽曲のスタイルや物語性、歌詞に込められた感情を丁寧に掬い取って、その想いの色彩とダイナミズムを最大限にブーストすることに全身全霊を傾け続ける真摯なアティテュードが、類稀なるボーカリゼーションと渾然一体となって、Adoという音楽世界を作り上げる唯一無二の原動力となっている――。そんなスリリングな時代に立ち会っていることを、1曲また1曲と新曲に触れるたびに嬉しく思う。“ショコラカタブラ”に続くAdoの2024年第2弾シングルは、作詞・作曲・編曲:ポリスピカデリーによるハイブリッド・ロック“Value”。《リミッター働くまで/優越の海泳いでる真似》と気怠く歌うイントロから、《背中に残る憂い/風が奪ってくのを感じながら》という絶唱へと極まる熾烈な展開は、聴く者すべてを魂の断崖絶壁へと誘う戦慄必至のドラマ性に満ちている。(高橋智樹)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年5月号より抜粋)
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