【JAPAN最新号】Ado、叶えた夢、そして残された夢を語る──革命の国立公演、世界ツアーで見えたもの、そして次章へ

【JAPAN最新号】Ado、叶えた夢、そして残された夢を語る──革命の国立公演、世界ツアーで見えたもの、そして次章へ

終わりっていうのは私にとって、本当に自分を好きになる瞬間なんだろうなって思っている。喜んでくれとも言いませんし、悲しんでくれというのも違いますが、私は少なくとも全部いい方向に進んでいる

僕はAdoに会ったことはない。だが、Adoのことは誰よりもよく知っている。
ライブを見ていれば、その歌を聴いていれば、Adoはいかなる考え方をし、どんな育ち方をして、何に怒り、何に喜び、何を目指しているのか、あるいは、音楽というものをどのように愛しているのか、どんなふうに必要としてきたのか、そんなAdoをめぐるすべてのことを知っているような気がしてくる。古今東西、優れた表現者とはそういうものなのだとしても、デビュー以来、Adoがやり続けているその伝達の精度と迫力は群を抜いたものに見える。
Adoの素顔は誰も知らない。だが、彼女が歌と言葉にすべてを賭してやり続けてきたその「半生の伝達」の正確さにおいて、そんな事実は、本当にただの事実にすぎないと僕は思う。
Adoはその歌と言葉で、「Ado」という人にまつわるすべてを伝えようとしている。そして、その賭けに勝ち続けている。その最大の勝利が、4月27日、28日に行われた国立競技場2デイズ公演だったのだと思う。
Adoは半生を追いかけていくコンセプトを前提にセットリストを組み、その生涯をかけて培ってきた、文字通り、渾身の歌を歌ってみせた。詳しくはインタビューに譲るが、国立競技場という国内最大規模の会場、好奇や興味、あるいは想像すらできないほどの重圧といった様々な思惑と思念が渦巻く、計14万人以上が集ったあの空間をして、「このライブは自分の半生そのもの、自分のためのものだった」と言いきれるシンガーが他にいるのだろうか。
たったひとりで14万人に向き合うこと自体がすでに偉業だが、その戦いに向かう彼女がその手に有した武器は己の「半生」と「歌」のみだったのだ。その覚悟と決意の深さたるや──と書いてしまえばありふれた表現になってしまうが、Adoが今明かすその覚悟と決意の内幕には、何か今を生きる僕たちにとっても、とても大切なこと──それこそ、自分の生をまっとうすることとは何か、人はいかなる心で生きていくべきなのか、といった深淵な問いすら解く鍵を与えてくれるんじゃないか。そんな途方もない期待をも抱きながら、僕は今回、国立競技場公演をやり遂げたAdoへのインタビューに臨んだ。
Adoの国立競技場公演とはそれくらい、「Adoの生き方」そのものだったのである。

上にも引用させてもらったが、額縁に入れて目の前に飾り、毎朝読み上げたくなるような言葉ばかりである。Adoのインタビューに確信が見えなかったことなど一度もないが、自ら掲げた巨大な賭けに勝ってみせた今、その言葉は過去のどの時点よりも質実の伴った強烈な説得力をまとっている。
前人未到の領域に挑み続ける21歳、Ado。彼女はこれからどこへ向かっていくのだろうか。自ら叶えた夢の光景、そして未だ残された夢の地図を語ってもらった。

インタビュー・文=小栁大輔 イラスト=ORIHARA
撮影=Viola Kam[V’z Twinkle]、石井亜希、木村泰之

(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年7月号より抜粋)


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