大阪発の4人組・Bye-Bye-Handの方程式からはその匂いがする。なんせ初のフルアルバムのタイトルが『ソフビ』である。ソフト塩化ビニール。幼年期の象徴的なウルトラマンとか戦隊モノの玩具、ソフビ人形の素材。それをもじった“ソフビ人間”という曲では《ロックンロールの神様/お願いここまで来てよ/きっと僕たちは子どものまま》と歌う。
他に“ロックンロール・スーパーノヴァ”なんて曲もある時点で、もう何を大切にしているバンドなのか丸わかり。汐田泰輝(Vo・G)が万能感込みで描く少年性と湿っぽくないノスタルジーは彼らの大きな特徴の一つだ。中学の同級生で結成という出自も、ライブ現場やオーディションで名を上げてきたヒストリーもイメージ通り。サウンドとしては、ガレージロックと青春パンクとダンスロックを粗挽きでミックスしたら、成分無調整のロックンロールができあがったという感じで、基本的にラフ&性急で3分にも満たない曲が多いが粗野ということはなく、バラードソングに限らず随所に「お!」という秀逸なメロディが差し込まれたりと、ポップスとしての強度もちゃんと備わっている。
すでに地元・大阪のBIGCATで自主企画フェスをソールドさせたり、「イナズマロック フェス」出演を果たしたりと、僕のような懐古おじさんの耳以外にもしっかり届いている様子。今回のデビューを機に、ひと回りふた回りデッカいロックンロール・ドリームを体現する気配に満ちている。
文=風間大洋
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年7月号より抜粋)
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