ああもうたまらん、と声が出る。一生聴いていられる。評価をするのもおこがましい。あいみょんの新曲“会いに行くのに”はそういう素晴らしすぎる楽曲である。と同時に、この言葉が最大限の賛辞になるアーティストを僕はあいみょん以外に知らないが、あいみょんから届けられた「いつもどおりの」名曲である。宝石のような煌めきと磨き抜かれた豊かな感性が、この5分12秒の楽曲には一分の隙もなく敷き詰められている。なんて贅沢な音楽体験だろうと思う。世の中全部ラブソングやと思ってる。一個しかないものを、みんな違う角度で書いている感じがする。だから、音楽って面白いな、言葉って面白いなって
だが、この楽曲を繰り返し聴く中でふと思う。おまえはいつもどおりの名曲だと嬉しくなっているが、果たしてこの曲は「これまでと同じ」、あるいは「これまでの何かと似た」あいみょんの名曲なのか?と。この曲はこれまでの名曲ともどこか手触りの違う名曲なんじゃないか──。無限の考察を受け入れる懐の深い歌詞、J-POPへの大きな愛を吸い込みながら自由に美しい流線を描くメロディ、表現の粋を極めた繊細な、まるで紙飛行機をまっすぐに飛ばすようにすっと放たれる歌。そして、季節をめぐる精彩な情景と、今と過去を行き来する切ない抒情が入れ子のように立ち現れる、「記憶」をテーマに編み上げられた物語。そのどれもが彫像を削り出していくような精緻な作業の果てで見事に磨き上げられている。あえて言うならば、ひとつの完成形──それが“会いに行くのに”の真実なのだと思う。
“会いに行くのに”はたしかにいつもどおり届けられたあいみょんの名曲である。だが何より、音楽家としての確かな成熟と、日々の中で繰り返される終わることのない探求が導いた、最も新しくて、最も深まった、あいみょんのひとつの到達点としての名曲なのだと思う。
あいみょんとともに、今回も届いた「いい音楽」について語り合うのは本当に楽しい。この曲に至るあいみょんの日々を思いながら、ぜひみなさんにも楽しんでほしい。(以下、本誌記事に続く)
インタビュー=小栁大輔 撮影=嶌村吉祥丸
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年7月号より抜粋)
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