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曲を再生して聴こえるのは、電車が走る音だろうか。もし電車の音なら、この電車はどこへ向かうのだろうか。いや楽曲に閉じ込められた以上、この電車は永遠にどこにも行き着きやしないのか。永遠に走り続ける電車。歌詞には《日々共に生き尽くすにはまた永遠も半ばを過ぎるのに》とあるが、『永遠も半ばを過ぎて』とは中島らもの小説である。何はともあれ、この電車がどこかに辿り着くとすれば、それは聴き手の力によってこそ成されることなのかもしれない。“LADY”に続く日本コカ・コーラ「ジョージア」CMソング。モータウンポップとビートミュージックが混ざり合うような斬新なサウンドは“LADY”とは違うキレ味で日々を描く。歌詞には時に苛立ちが滲む。その苛立ちと、手放せない祈りの狭間に、人間がいる。この人は、苛立ちはすれど、人生を憎んではいないだろう。この人は「今」という崖っぷちから、未来に持って行けるもの、何が零れ落ちようとも自分の手に残るものについて、思いを馳せている。(天野史彬)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年7月号より抜粋)
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