起死回生の再出発

パニック!アット・ザ・ディスコ『悪徳と美徳』
2011年04月13日発売
ALBUM
パニック!アット・ザ・ディスコ 悪徳と美徳
前作から本作に辿り着くまでのパニック!アット・ザ・ディスコの足取りというのは、控え目に言っても散々なものだったと言っていい。デビュー作『フィーバーは止まらない』でダンス・ビートを取り入れた新世代エモの代表格となった彼らだが、よりクラシック・ロック色を強めたセカンド『プリティ。オッド。』があんまりセールス的にふるわず、バンド内に亀裂が走って、メインでソングライティングを担当してきたライアン・ロス(G)を含む2人が脱退。結果、残されたブレンドン(Vo&Key&G)とスペンサー(Dr)だけで活動を続けていくことになり、たった2人の態勢で作られたのが本作になる。こうした経緯を考えても、どうなるか予断を許さない状況だったのだけど、届いた新作を聴いてビックリしてしまった。こうした苦難のストーリーの後に本作がどれだけの人に届くのかは分からないのだけれど、完全復活と言える作品なのだ。

ブッチ・ウォーカーとジョン・フェルドマンという熟練プロデューサー2人の力は大きかっただろうが、今回、彼らがメンバーに言い続けたのは「これは君のレコードなんだから、君が曲を書かないといけない。僕は君たちのために書きたくはない」ということだったらしい。それで、まったく捨て曲のない10曲が揃ったのだから、すごいとしか言いようがない。シングルの“モナリザのバラード”1曲からも本作の楽曲クオリティは窺い知れるはずだ。

もう一つ素晴らしいのは、ちゃんとセカンドの音楽性もここでは昇華されていること。ラスベガス出身ならではのサービス精神という意味でキラーズを思い出した。(古川琢也)
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