(If he could)SMILE

ビーチ・ボーイズ『スマイル デラックス・エディション』
2011年11月16日発売
ALBUM
ビーチ・ボーイズ スマイル デラックス・エディション
今作を聴いてしまった後では、ブライアン・ウィルソン自身が04年にソロ名義で出した『スマイル』すら牧歌的な追憶アルバムに聴こえてしまうほどだ。いや、あれは『スマイル』が青春の輝きに満ちたポップ・アルバムであってほしいと願うブライアンの願いそのものだったのだろう。それほどまでに、今作の徹底的な構築主義は、スマイルどころか一切の笑顔の入り込む余地のないハーモニーの要塞となって荘厳に結実している、ということだ。ゴーギャンとゴッホの画の断片を1mmの切れ目もなくつないだような“笑雄と悪漢”の高揚と憂い。海の底から見た太陽の如き“ドゥ・ユー・ライク・ワームズ(ロール・プリマス・ロック)”の白昼夢感。コーラス・プログレとでも言うべき“サーフズ・アップ”の目映い闇……66~67年のセッション以降お蔵入りになっていたマスター・テープをアル・ジャーディン、マイク・ラヴ、そしてブライアンの協力のもと改めて編集し完成させたこの名盤は、ポップという名の鏡を穴が開くまで磨いた挙げ句にその「向こう側」の世界を覗いてしまったブライアンの心象風景をリアルに活写している。戦慄。(高橋智樹)
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