U2の金字塔再訪

U2『アクトン・ベイビー~デラックス・エディション』
2011年11月23日発売
ALBUM
U2 アクトン・ベイビー~デラックス・エディション
U2にとっては画期的な転換点となった傑作91年の『アクトン・ベイビー』。『魂の叫び』まではポスト・パンク期以降のインディ・スピリットをどこまで拡大再生産し伝播させるかという途方もない聖戦に乗り出していたU2だが、『魂の叫び』の頃になると、80年代初頭のインディ・ロックも遠い夢の跡のように思えてU2の姿も見果てぬ夢を見続けるロマンティストの様相を呈し始めていた。なにしろイギリスではすでにレイヴとマンチェスター・シーンが全盛を迎えていたのだ。そこで全面的にアプローチをあらためたのがこの作品で、作品のテーマも疑心暗鬼や不安、人知れず抱える欲望などをあえてえぐるように綴るものが増え、こうしたテーマ性にあわせてサウンドも生まれ変わったように一新させた。サウンドへのアプローチはエレクトロニック・サウンドの激しい導入があるとはいえ、基本は同じバンドとしてやっているだけで、それだけでここまで音の刷新を実現したことは驚異的な偉業だとしかいいようがない。こうした新境地の中で、灰汁にまみれてあえて愛を語ってみせる“ワン”はバンドが新たな地平に立ったことを記す名曲となった。今回の再発はリマスタリングのほか、ヴァージョンによってB面曲とボーナス・トラックがついてくるが、やはりこのB面曲とアウトが一番盛り上がるところ。また、スーパー・デラックス・エディション以上になるとそのほかの音源やヴィデオ・クリップやドキュメンタリー映像、そして93年の『ズーロッパ』もついてきてしまう。本作の発展的続編となるこの作品はリマスタリングによりわかりやすくなったと感激。(高見展)
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