ザ・クラッシュ1982、燃え尽きる直前の炎はあまりに目映い

ザ・クラッシュ『ライヴ・アット・シェイ・スタジアム』
2008年10月22日発売
ザ・クラッシュ ライヴ・アット・シェイ・スタジアム - ライヴ・アット・シェイ・スタジアムライヴ・アット・シェイ・スタジアム
パンクのギグは、100人も入らないハコでグチャグチャになって行なわれるものというイメージがあるので、冒頭の大歓声には不思議な気持ちになる。だが“ステイ・オア・ゴー”のビデオを観たことがある人ならすぐ映像が浮かぶだろう。ザ・フー解散ツアーの前座とはいえ、当時のクラッシュは『コンバット・ロック』の成功により、USでもスタジアム規模に相応しい立場にいた。

もともとライブ盤化される予定でグリン・ジョンズが録音しただけあり、発掘音源にしては音質は良い。ただ、これはパンクではなく「ロック・バンド」のサウンドだろう。最初は奇妙な感じがしたが、それも慣れてきたら最高だと思えてきた。当然ピアノを抜いたアレンジの“ロック・ザ・カスバ”も、会場のあったNYで黒人が作ったリズムだとジョーが説明する“ライトニング・ストライクス”も、ここでは大文字のロック・ナンバーとして鳴っている。この頃にはレゲエ/ダブをはじめ、全方向に音楽性を拡げていたけれど、それらの核にあったロックンロール・バンド=クラッシュの姿が、本作には記録されているのだ。

すでに、全米で大ヒットした“カスバ”の作者であるトッパーは解雇され、初代ドラマーのテリー(結構しっかり叩けていて驚いた)が呼び戻された状態だし、この後すぐにミックも脱退して、バンドが終焉を迎えるのはご存知の通り。この時クラッシュはパンクを超え、世界最高のロック・バンドになっていたが、その期間はあまりに短かった。そこがまた彼ららしい……。(鈴木喜之)
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