美しくも恐ろしい

ブリアル『ライバル・ディーラー』
2013年12月14日発売
ALBUM
ブリアル ライバル・ディーラー
ちょうど1年前に出た『トゥルーアント』に続く3曲入りシングルで、2曲は10分を超える大作という、言ってみれば『アントゥルー』(2007)以降のブリアルの標準的なスタイルである。アルバムを出さず、長尺の楽曲を収めたシングルのみを出し続けるのは、やはり迷いを感じてしまうのだが、ブリアル自身の思惑はどうであれ、このシングルは傑作である。

幻視されたムーディなヴォーカル・サンプル、強烈なインダストリアル・ノイズと激烈な2ステップ・ガラージのブレイクビートが錐もみするように墜落し、白昼夢のごときアンビエントに着地するタイトル曲、80年代エレポップ風なヴォーカルとシンセのカットアップ・コラージュによる小品、そして民俗音楽的なヴォーカル/楽器サンプルと、ざらついたアンビエント・ノイズが織りなすダウンテンポ・エレクトロニカの大作。いずれも優れて映像的なイメージを喚起し、聴き手のイマジネーションを刺激する。

ジャンルとしてのダブステップの空洞化がよく指摘されるが、ブリアルは必死にその先にあるものを探り当てようとしている。その試行錯誤の過程さえもが美しい。(小野島大)
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