水曜日のカンパネラ・コムアイ×Moodoïd、スペシャル対談! コラボ楽曲“マトリョーシカ”について、ふたりの「共通言語」で語り合う

水曜日のカンパネラ・コムアイ×Moodoïd、スペシャル対談! コラボ楽曲“マトリョーシカ”について、ふたりの「共通言語」で語り合う

このタイトルは、わたしが今は邦楽のマーケットの中にいるということを強調するものです(コムアイ)


──まず、今回の水曜日のカンパネラとしてのEP『ガラパゴス』では、これまでの作品に一貫してあったヘビーなビートやグルーヴから遠ざかって、よりポップで多様性に富んだ音像が揃った内容になったと思うのですが、こういう進化というか方向を取ったのは、意図があってのことなのか、あるいはもっと実験的な試みから出てきたようなものだったんでしょうか。

コムアイ うーん、わたしからチームのみんなでシェアするプレイリストを作ったっていうのがまずあって、その中にアフリカとか、キューバとか、南米の曲とかがたくさん入っていたから、それでいろんな場所や土地のバイブが聴き取れるものになったのかもしれないですね。ただ、それでも今回パブロとコラボレーションすることになったというのは、やっぱり驚きでした……。今回のEPは『ガラパゴス』というタイトルなんですけど、このタイトルは、わたしが今は邦楽のマーケットの中にいるということを強調するもので、わたしが大好きなものもそうでないものも、どちらもやっぱり日本のカルチャーのものだということがあって。日本は島国だから、やっぱり海外のカルチャーとはいろいろ違うところがあるんだなって、いい意味でも悪い意味でも感じるわけですね。

──なるほど。

コムアイ ちょっと意味のわからない慣習とか、政治とか、たとえば、わたしが日本でOLをやっていたとしたら、たぶんその生活を続けることはできなかったんじゃないだろうかというような。逆にいい意味では、歌舞伎とか能とかすごく好きだったりするけど、それもやっぱり同じ理由からで、室町時代から変わらないものがあるからそれだけ美しいということもあるわけです。そこで今回のタイトルをつけました。曲の歌詞としては英語のものを書きたかったんですけど、それができなくて──やっぱり英語の発想で考えていないからなんです。なんか、そういうところの皮肉というか、アイロニーもあって──というのも『ガラパゴス』という(隔絶された)テーマなのに、パブロとのコラボレーションはできるってことで、パブロがわたしのアルバムに参加して、日本語で歌ってくれるっていう、そういう枠を壊してくれるところがいいサプライズになったっていうか。横からぐさっと彼が入ってくるような感じになって、よかったなと思います。

──ちなみに、今回のこのコラボレーションはどうやって実現したんですか。

コムアイ この人(取材に同席した、パブロのフランス語通訳でクリエイティブマン・在パリ駐在員の山田容子氏)のおかげです(笑)。

パブロ・パドヴァーニ (笑)マネージャーや友達とかに、日本のアーティストとコラボレーションしてみたいと相談していて。ヨーコはぼくのマネージャーで、しかもコムアイとも友達だったんです。そこでぼくたちのコラボレーションにふさわしい人選をヨーコが考えた時に、どちらもクレイジーだからってこの組み合わせになったんだろうと(笑)。クレイジー同士、コラボレーションとして成立するんじゃないかしらっていう(笑)。

──(笑)。たとえば、音源をネットで送り合っていたんでしょうか。それとも、実際に一緒にスタジオに入ったりしたんですか。

コムアイ 一緒にスタジオには行ってないです。パブロに初めて直に会ったのも、実は一昨日なんですよ(笑)。そこで初めて物理的に会ったというか(笑)。でも、全然初対面という感じはしなくて、それはずっと3ヶ月くらい一緒にやってきたからで。パブロは自分の寝室でボーカルのレコーディングをやって、わたしは麹町のすごく小さなスタジオで自分の声をレコーディングして、そんな音源をやりとりしていったという感じです。なんか多めにお互いのテイクを送り合ったりとか、パブロもコーラスとかハーモニーとかが違うものをいろいろ送ってくれたりして。そうやってどんどんアップグレードしながら、でき上がっていきました。


ひょっとしたらぼくたち繋がっているのかもね(笑)(パブロ)


──曲のきっかけみたいなところはどうやって始まったんですか。

コムアイ まずケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)がデモを作って、それをパブロに送ったんですけど。タイトルについて何かアイディアがあるかって訊いたら、「マトリョーシカ」っていう提案があったんです。

──ああ、じゃあ「マトリョーシカ」っていうモチーフはパブロから出たんですね。

コムアイ はい。

パブロ というのも、この音楽は永遠に波紋が続いていく波のような感じだったから、そう言ってみたんですね。ぼくとしては、「マトリョーシカ」というのは永遠性との同義語で言っていて、それでマトリョーシカについて歌ってみることにしたわけです。

──その一方で、コムアイさんとしては、「マトリョーシカ」というコンセプトがパブロから来て、それをどう歌詞として発展させたんですか。

コムアイ わたし、この歌詞好きなんですけど、ほかにマトリョーシカのまんまの歌詞もあったんです。身体の中に宇宙があって──マトリョーシカそのものは宇宙というわけではないんですけれども、マトリョーシカって、中にレイヤーや層がばあーっと重なっていて、それが広がって、マクロとミクロに同時に広がっていくっていう感じで、細胞とかバクテリアの次元からいきなり宇宙の次元まで行けるような、なんかそういうイメージがすぐ浮かぶっていうか。わたしもそうだし、パブロもそうなんですけど、マトリョーシカっていうのは、そうやっていろんなスケールに発展して、上も下も終わることがないイメージっていうか。たとえば、1枚の写真を見ていたら、虫の足の1本に目が向いて、その虫の足の1本を見ていくとそこには毛が生えていてっていう、そういう顕微鏡を覗いているような感じがあったり、どんどんそこから引いて全体が見えていく感じも同時にあったりして。そこから宇宙っていう言葉が出てきたり、あとは仏教の用語が出てきたりして──あれはお経をパブロに歌ってもらったりしているんですけど。

──もともとぼくは、この「マトリョーシカ」というすごく内側に積み重なっていくイメージが、ガラパゴスというコンセプトと繋がっているものなのかなと勝手に想像していたんですけど、実は「マトリョーシカ」とはパブロが思いついて提案したものだったわけですよね。でも、ある意味、パブロはこのガラパゴスのコンセプトをその「マトリョーシカ」というアイディアで汲んでいたわけでもあって、そこが本当にコラボレーションなんだなあと、今感じたりもしたんですが。

コムアイ (パブロに向かって)でも、わたしそんな話はしてなかったよね?(笑)。

パブロ うん、していないね。ひょっとしたらぼくたち繋がっているのかもね(笑)。

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