MAN WITH A MISSION、『ヒロアカ』OP曲“Merry-Go-Round”で新たに示す大胆不敵な「王道」の正体

MAN WITH A MISSION、『ヒロアカ』OP曲“Merry-Go-Round”で新たに示す大胆不敵な「王道」の正体
テレビアニメ『僕のヒーローアカデミア』の第5期第2クールのオープニングテーマとしてオンエアされているMAN WITH A MISSIONの新曲“Merry-Go-Round”。9月8日(水)にシングルリリースされたこの曲は、MWAMが今改めて放つ王道ロックアンセムだ。ハンドクラップと高らかに打ち鳴らされるスネア、そして《WOW WOW itʼs all right/Everything will be all right》という力強い言葉とともに始まるこの曲が伝えるのは、理想との距離に途方に暮れ、傷ついたり悔しい思いをしながらも、立ち上がり未来へと進む主人公の姿。ぐるぐると回り続けるメリーゴーラウンドのように、何度でも前を向き終わりのない夢に向かって足を踏み出す、希望の歌だ。

2020年2月9日からスタートし、ベストアルバムのリリースやライブなどさまざまなプロジェクトを(一部企画はコロナ禍の影響によって完遂できなかったものの)発信し続けてきた10周年イヤーを終え、バンド始動から11年目に突入した現在のMAN WITH A MISSION。今年に入って2月の『ONE WISH e.p.』、6月のシングル『INTO THE DEEP』と精力的なペースでリリースを重ねる中、間髪を入れずに届いたのがこのニューシングルである。

映画『ゴジラvsコング』の日本版主題歌となった“INTO THE DEEP”、NHK『みんなのうた』に起用された“小さきものたち”、そして今回『ヒロアカ』のオープニングとして書き下ろされた“Merry-Go-Round”。大型のコラボレーションを繰り広げながら、同時にこれらの新曲たちは、アニバーサリーを経て今一度、MAN WITH A MISSIONというロックバンドの原点とそこから進むべきまっすぐな道を指し示してもいる。頭はオオカミ、身体は人間という特異なこのバンドが、人間たちに伝えるメッセージとは何か、鳴らすべきロックとは何か。そんな本質的な問いに、今のMWAMは迷いなく向き合っているように感じる。

“Merry-Go-Round”はカミカゼ・ボーイ(B・Cho)が作曲し、歌詞はカミカゼとジャン・ケン・ジョニー(G・Vo・Raps)の共作クレジットとなっている。シンセサイザーのデジタルサウンドと重厚なギターのリフがぶつかり合い、どっしりとしたビートが楽曲を力強く前進させる。そしてストリングスが華々しく鳴り、スケールの大きなメロディが響き渡るサビへ。洋楽仕込みのヘヴィネスとJ-POP的なポップネスがごく当たり前に同居したハイブリッドチューン。『ROCKIN’ON JAPAN』2021年10月号掲載のインタビューでジャン・ケンは、「洋楽ノ構造プラスJ-POPノマスナ感ジトイウカ、ソレッテ私的ニハ、彼(カミカゼ)ノド真ン中ナンデス」と語っていたが、作曲者カミカゼの好みを全解放して投入した結果生まれたのが、このアンセミックな名曲だということだろう。そのギアの入れっぷり、アクセルの踏みっぷりにこそ、今のMAN WITH A MISSIONが抱く確信と覚悟がある。

中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)と組んだ“INTO THE DEEP”もそうだったが、この“Merry-Go-Round”もそれとは少し違うベクトルを持ってはいるものの、これまでの10年をかけてMAN WITH A MISSIONが築き上げてきた「らしさ」から激しく逸脱するような楽曲ではない。むしろ、デジタルとアナログの融合、あるいは洋楽らしいサウンドと邦楽らしいキャッチーさのマッシュアップという彼らならではのスタイルにさらに磨きをかけた、ある意味で究極の「お家芸」のような曲だ。だが、聴いた手応えとしてはまったく違う。かき鳴らされるギター、ゴリゴリとドリルで岩盤を掘り進むような重低音、スリリングな展開とメロディに《あなたは僕の中で何よりも誰よりも輝いているんだ》(訳詞)というストレートなメッセージ性。どれもが一切の衒いなしに、堂々と鳴り響いている。方法論自体はこれまでも彼らが打ち出してきたものにほかならないが、そこに向き合う姿勢と温度に、これまでにない大胆不敵さを感じるのだ。

これまで何度も書いてきたが、このオオカミたちを10年以上の長きにわたって走らせ続けているもっとも大きな原動力は、ロック、そしてロックバンドという存在に向けられた憧れとリスペクトだ。ロックから受け取るエネルギーとメッセージ、それを燃料にして彼らはバンドをスタートさせ、さまざまな楽曲を生み出し、ライブを繰り広げてきた。もちろんその過程ではさまざまな試行錯誤があり、時には自分たちの鳴らすべき音楽について迷ったり悩んだりしたこともあったはずだ。だが、決して少なくない紆余曲折を経て、今の彼らはもっとクリアな視界でロックを、自分たちの音楽を、捉えているように思える。先述のインタビューの中で、ジャン・ケンはこう語っていた。

「自分タチガ未ダニ20年前、30年前ノ楽曲ヲ聴ケルッテイウノハ、ソレハソウイウ楽曲タチガ持ッテイル生命力ダッタリスルト思ウンデスネ。我々ガコレカラ作リ出シテイク作品トイウモノモヤッパソウアルベキダナト思ウンデス。モチロンズットソウアリタイト思ッテ作ッテキタツモリデスケレドモ、ヨリ深ク、心身トモニソウイウトコロニ向キ合ウベキダナト」

シーンの動向や世の中のトレンド、もっと言えばネットがどうとかコロナがどうとかいう時代性をも超越した、音楽の根源的で普遍的な求心力や訴求力。それを彼は「生命力」という言葉で表現したが、それこそが自分たちが表現したいもの、すべきものである――そうした迷いなき信念が、この“Merry-Go-Round”をはじめとした最近のMAN WITH A MISSIONの楽曲には宿っている。だからこそその信念は『ヒロアカ』とも共鳴し、これほどストレートで強い希望の歌に結実したのだ。

7月3日、2年ぶりに開催された「京都大作戦2021」初日のステージで、ジャン・ケンは「世界ガドウ変ワロウト、アナタタチノ心ハ変エラレナイ!」と叫んだという。そして8月22日、「FUJI ROCK FESTIVAL '21」最終日、忌野清志郎トリビュート「Rock’n’Roll FOREVER」のステージに登場したジャン・ケンとトーキョー・タナカ(Vo)は、錚々たるメンツとともに“ドカドカうるさいR&Rバンド”を披露した。ロックへの揺るぎない信頼と愛がその振る舞いからは溢れていた。11年目のMAN WITH A MISSIONはその土台をこれまで以上にしっかりと踏みしめながら、その歴史の先端で新たなページをめくろうとしているのだ。(小川智宏)

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