【インタビュー】異次元のドームツアーと新曲群を貫くVaundyの破格の「ロジック」。そのすべてを解き明かす最新ロングインタビュー!

【インタビュー】異次元のドームツアーと新曲群を貫くVaundyの破格の「ロジック」。そのすべてを解き明かす最新ロングインタビュー!
Vaundy、25歳。改めて考えるともはや驚異的な存在と言わざるを得ない。あれほど高く評価され、あれほどの数の楽曲を連発し、あれほどのタイアップをこなし、それらが常にランキングに躍り出て、MVも監督し、そして全国ドームツアーも全公演ソールドアウトで完遂した。これまでの日本のアーティストのスケール感を超えている。

そしてさらに、Vaundyが驚異的なのはその制作姿勢においてだ。彼の楽曲制作は常に彼の思想から生まれたロジックやコンセプトに基づいて行われる。気分や感性やひらめきが主役になることはなく、曲作りの時点でまず向き合うべきテーマを設定して、そのテーマに相応しいロジックを展開しながらそのロジックそのものを曲に落とし込んでいくという極めて日本では特異なやり方だ。ロジックを美しく鳴らす、という創作。それは実はポップミュージックの本質で、ポップスは気分や感性の表現と捉えられがちだが、本当に普遍的で優れたポップスはビートルズの時代から常に思想とロジックが鳴っているのだ。Vaundyはその次元に立っている。

この別冊特集では、あの超ハイパーなスケール感とパワー感で日本中を圧倒したドームツアー「SILENCE」 をロングレポートで振り返りながら、ツアー最終日直後のVaundy本人のロングインタビューでツアーのこと、これからのこと、そして今年も続々とリリースされている新曲群に潜む「ロジック」をしっかりと語ってもらった。前のめりで楽しんでください。

インタビュー=山崎洋一郎 文=小川智宏 撮影=日吉"JP"純平


このタイミングでドーム公演ができたのはチームにとってもファンにとってもよかったと思う。ドームをやったことで団結力が深まった

──ドームツアーの話から聞いていきたいんですけど、終えてみてどうですか?

どんな会場でもいつも通りのことをできるようにしてきたんですけど、ドームでもちゃんとできたかなって。やっぱり会場を広げていくのはすごく難しいなあと思ってて。ライブの接近感が均一じゃないと、遠くにいる人たちは冷めちゃうので、あんまりそう感じさせないようにしたいなと思ってるんですけど、ドームになるとどうにもできない領域なんですよね。でも、演奏側としてはいつも通り、いつも以上をやることができてたと思いますね。

──今回は初めてLEDに映像を出したり、演出でバルーンを客席に出したりしてたけど、何によっていつもと変わらない距離感を生んでいたかというと、音楽のダイナミズムだったなって、みんな感じたと思うよ。いつものVaundyの音楽がただ巨大で強靭になって、まるで1公演が1曲に感じるくらい、曲のグルーヴとダイナミズムのうねりを1匹の生き物として見せるようにセトリが作られてるなと思った。

一連感があるほうが僕のスタイル的にはいいなと思ってて。ライブでは曲間が面白くなってることでどれくらい没入できるかをお客さんは判断すると思うんですけど、その微妙な隙間をうまくコントロールしないと一連のようには聞こえないので。

──曲が終わってから次の曲まで、もちろん間はあるんだけど、同じバイブスがずっと維持されてる感じがあったから、すげえなと思った。

お客さんの感じもあるかもしれないですね。ちゃんと全曲知ってくれてる人たちが来てて全曲に思い入れがあるから、会場ごとの流れがあって。逆に言えば会場ごとにライブの雰囲気が変わるし、ミッドポイントも変わってくる。僕のライブはお客さんが作るものでもあるんです。お客さんによって俺の歌も変わるので、盛り上がってない会場では盛り上げるほうを頑張ろうとして歌が下手になったりするし、盛り上がってる会場だったら気にしなくていいから全力で歌える。同じセトリで同じことをやってても、まったく違う7公演だった気がします。

──Vaundyのライブは、コール&レスポンスやリアクションがすごいんじゃなくて、聴くことでライブに参加する感じが充満してるのがすごいよね。

僕が舞台に立ってますけど、結局は会場にいる人たち全員が舞台の上の人になってほしいなと思ってて。そうなっていれば本望ですね。一生涯かけてこういうライブの延長をずっとやっていくと思います。これからお客さんの世代も変わるだろうし、このタイミングでドーム公演ができたのはチームにとってもファンにとってもよかったと思う。鉄がいちばん真っ赤な時にちゃんと打てたというか──それによってみんなと一緒に成長する、刀になるみたいなイメージ。ドームをやったことで団結力が深まったと思います。

【インタビュー】異次元のドームツアーと新曲群を貫くVaundyの破格の「ロジック」。そのすべてを解き明かす最新ロングインタビュー!

「革命の前の沈黙」って呼んでるんですけど、大きなことが起きる直前とか起きた瞬間に人は止まるんです。その「サイレンス」の状態にすごく大事なことを考えてたりする

──ツアータイトルにもなっている新曲“The SILENCE”をラストで歌ってたけど、これはどうやって作っていったの?

この曲はMVを作るところから始まったんですよ。“僕にはどうしてわかるんだろう”のMVから始まり、“pained”、“ずっとラブソング”と続いて過去の回収をして、今、「サイレンス」というのがすごく大事だよっていうので、この“The SILENCE”のMVで一旦完結した。その流れのうえにドームツアーもあるというイメージです。

最後に“The SILENCE”を歌うことによって、静止した空間の中でみんながこの先のことを考えるのか、やり残したことを思い出すのか──自分にとって大事なその静寂な時間をイメージして作ったのが“The SILENCE”です。「革命の前の沈黙」って呼んでるんですけど、嵐の前の静けさというか、大きなことが起きる直前とか起きた瞬間に人は止まるんです。そのサイレンスの状態にすごく大事なことを考えてたりするから、それを大事にしようよっていう僕なりの今の考えが詰まっています。

──この曲、いわゆる今のJポップ、Jロックシーンの中にはないサウンドじゃない? 完全にシューゲイザーで。Vaundyの曲としてここまでこういうサウンドにしたことはしばらくなかったよね。

そうですね。そもそもこの曲がポップスになれるかはわからないですけど──最初からポピュラーなものはできないから、ポップスって結局は後発じゃないですか。だから、この曲がどうなってくか次第だとは思います。最初からポップスにしようと思って作るのは難しいんですよね。ただ、僕らアーティストは常に現象の先駆けになっていかなきゃいけないので、抽象的に考えながら、この先、人が聴いて、思い出して嬉しい曲を作らなきゃいけない。ファッション業界でいう、今年流行のカラーを作るみたいな先駆けをやっていくのがポピュラーの仕事でもあるので。

──これまでのVaundyはその理屈をもうちょっといい塩梅でやってたじゃない? でも、この曲ではそのいい塩梅感をわりと排除するようなアプローチを取ったのはどうして?

昔から時々そういう曲は出してて、“ZERO”や“宮”もわりとそうかなと思ってるんですけど──トヨタが出すコンセプトカーと一緒で、「こんなものを作れますけど、どうですか?」って出して、大衆やクライアントの人が聴いて、「これかもしれない」って思う曲を作ってるというか。僕はクリエイターで、作ることがいちばん好きだし、しかも僕はデザインを中心とした音楽を作ってるからコンセプトが必要で、提案方向になっていく。

その提案がたまたま最初からうまくいく時もあるし、第2号、第3号がポピュラーになっていく時もある。だから、俺が思う大衆的に売れる/売れないを意識するより、「こういうコンセプトもあるよね」「こういう選択肢もあるよね」って自分に投げかけてあげる。デザイナーは同じだけど違うものを作るという心がけを忘れないようにしたいなと思って、こういう曲をたまに出してます。

──この“The SILENCE”は、MVのストーリーも映像もものすごくて。俺はVaundyをすごく説明しているMVだなと思った。Vaundyが何をやってるのか、何をやろうとしているのかを説明してるし、音楽とはなんなのかも説明してると思う。

ほんとですか、嬉しい。“The SILENCE”の大きなテーマは、自分にとって大きなことが起きた時──親の離婚とか家庭環境が変わった瞬間だったり、好きな子に告白してフラれる時だったり、衝撃的に好きなものに出会ったりして、自分の人生が大きく変化する瞬間がいろいろあって。それってなんの前触れもなく訪れる、一瞬のことだと思ったんです。


ただ、それを受け入れる準備ができてないと、前に進むことができない。何かが変わった瞬間にどういう行動を取れるかは、自分が今までどういうふうに生きてきたかによってものすごく変わる。そこから逃げ出すのかもしれないし、冷静に見れるのかもしれないし、いろんなパターンがあるけど、どのパターンでも自分が今まで生きてきた流れの延長に突然やってくるものだから。だから、あのMVで何が大事かというと、急に人生が変わる時があるから準備しておいたほうがいいよね、ということです。

──Vaundyにとって、自分にとって何か大きな変革が訪れた時にすべてが止まって、自分がそれを受け入れてそこに踏み出していくというのは、重要なテーマなんだね。

重要ですね。僕には何度もあったと思ってるんですけど、その度に自分にとってほんとに大事だったものが掘り出されるというか。自分がほんとに好きなものがよりかたちになっていく、石の中から石像が出てくるという感じです。僕は家庭環境が変わった瞬間に、「やっぱりこれがやりたいんだな」ってなってから、歌しか歌ってない。それまではなんとなくものづくりが好きな少年だったけど、そこから自分が本当に必要なものってなんだろう?って考えて、環境が変わっていったり、衝撃的な運のよさがあったりした連続で僕はここにいます。そういう機会が何よりも大事なことだと思うし、準備もしてないといけない──それが難しくて。

どんなに運がよかったとしても、それに気づける、キャッチできる人間でなければ、運がいいとは言えなくて。僕は、子どもの時は自分のことをこんな運の悪い人間はいないんじゃないかって勝手に思ってたけど、自分が大事なものと向き合った時からどんどん運がよくなっていったって実感してるんです。人生ってチャンスの連続でできてるけど、好きなことに向き合ってないとそれに気づけないと思うし。いつまでも巡り会えるわけじゃないから、掴めるものをちゃんと全部掴んでいくつもりで生きていたいなって。

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