吉井和哉@日本武道館

吉井和哉@日本武道館
全23曲中12曲がカヴァー曲。しかし、どこを切っても吉井和哉のコアが透けて見えるような、スリリングなステージだった。THE YELLOW MONKEY時代からの恒例行事となっている12月28日の武道館ワンマン。11月19日にキャリア初のカヴァーアルバム『ヨシー・ファンクJr.〜此レガ原点!!〜』をリリースした今年は、「YOSHII KAZUYA SUPER LIVE 2014~此コガ原点!!~」というタイトルでの開催である。冒頭に述べた通り、先のアルバムに収録されたカヴァー曲中心の異色のライヴ。にもかかわらず、どうしようもなく吉井和哉の本質とオリジナリティが炙り出された生々しいステージの模様をお届けしたい。

暗転と同時にSEが鳴り響き、バンドメンバーの日下部正則(G)、三浦淳悟(B)、鶴谷崇(Key)、吉田佳史(Dr/TRICERATOPS)の4人が登場。『ヨシー・ファンクJr.〜此レガ原点!!〜』の1曲目を飾るクリエイションの“SPINNING TOE HOLD”で演奏をスタートさせると、サングラスをかけロングコートを羽織った吉井和哉が颯爽と現れる。そのまま突入した美空ひばりの“真赤な太陽”から、コブシの効いた歌声を響かせる吉井。艶っぽい歌声とブルージーなサウンドで濃密なムードを作り上げたかと思いきや、間髪入れずにオリジナル曲の“WEEKENDER”を叩きつけ、場内をスパークさせていく。そして「今夜はヨシー・ファンクJr.編と題しまして、子供の頃から慣れ親しんできた昭和の歌謡曲を中心にやらせてもらおうと思っています。今年の汚れは今年のうちに!」というファーストMCに沸き起こる大歓声――その息をもつかせぬ展開に、早くもむせ返るような熱気に包まれてしまった日本武道館である。

吉井和哉@日本武道館
その後はピンク・レディーの“ウォンテッド(指名手配)”、沢田研二の“おまえがパラダイス”“サムライ”とカヴァー曲を連打。昭和の歌謡曲をヘヴィ・ロック級のサウンドで届け、鬼気迫るような興奮を生んでいくバンドの勢いに驚かされる。何より圧巻なのは、そんなバンドをとんでもない声量の歌声で牽引し、本家のピンク・レディーやジュリーさながらのパフォーマンスで観る者を引き込んでいく、吉井和哉その人だ。そんなパワフルな歌とサウンドとパフォーマンスから放たれる生々しいエネルギーは、オリジナル曲に勝るとも劣らないほど。中でも、オルガンやオーボエの音色とともに深淵たる音世界を築いた来生たかおの“夢の途中”、荒井由実の“あの日にかえりたい”は、吉井のこんがらがった情念をそのまま浮き彫りにしているかのような切迫感に満ちていた。かと思えば合間にオリジナル曲の“VS”をブチ込んでオーディエンスの歓喜を突き上げていくわけだから、観ているこっちも気が抜けないったらない。こうして吉井ワールドにズブズブ引き込まれていく場内を前にして、「ほとんどカヴァー曲じゃねぇかとツッコまれそうですが(笑)。カヴァー曲を聴いて、オリジナルを聴いて、噛みしめるんですよ。双方のありがたみがよくわかる!」と話す吉井もご満悦な様子であった。

吉井和哉@日本武道館
12月28日に初めて武道館ライヴを実施したのはイエモン時代のこと。「当時はストリングスの生演奏をしてもらいました」と当時を振り返ったMCの後は、総勢10名のストリング隊を交えてあがた森魚の“百合コレクション”、弘田三枝子の“人形の家”をプレイ。オリジナル曲の“シュレッダー”もストリングス編成で披露して、荘厳で重層的なオーケストレーションを広げていく。大滝詠一の“さらばシベリア鉄道”から再びバンド編成に戻った後は、“MUSIC”“点描のしくみ”と自らのアッパー・チューンを連打! “MUSIC”の途中で吉井が叫んだ「今までやってきた曲が吉井和哉の血肉になっています。この“MUSIC”も君たちの血肉になりますように!」という言葉が、そして“点描のしくみ”の《点と点が線になって全部 繋がって気づいたんだ》という歌詞が、20年以上にも及ぶロック・キャリアを支えてきたルーツ・ミュージックへの多大なる賛辞のように熱く、力強く響いた。そして“ビルマニア”で盛大なシンガロングを導くと、オープニングと同様バンドが奏でる“SPINNING TOE HOLD”の旋律に乗って、吉井退場。ステージ両脇のビジョンにエンドロールが流れ、演奏を終えたバンドメンバーが去ったところで本編は終幕となった。

吉井和哉@日本武道館
アンコール1曲目の森進一“襟裳岬”では、『ヨシー・ファンクJr.〜此レガ原点!!〜』のレコーディングにも参加した八千代少年少女合唱団、福島県伊達市立伊達東小学校の生徒から成る総勢39名の聖歌隊が登場。どよめきに包まれた会場を初々しいコーラスで彩っていく。さらに先のアルバムを以って、イエモン時代に在籍していた古巣=日本コロムビアに正式移籍したことにかけ、同レコード会社の大先輩・笠置シヅ子の“東京ブギウギ”を即興で弾き語りして会場を沸かせる一幕も。その後は“アバンギャルドで行こうよ”“SUCK OF LIFE”とイエモン時代の楽曲を連打して、恒例のメンバー紹介が曲中に行われる“FINAL COUNTDOWN”で今年最後のロックンロール・パーティーをゴージャスにブチ上げていく。そして1月28日リリース予定のニュー・シングル“クリア”を披露!――なんだけど、序盤で演奏を失敗して2回ほどやり直すという事態が発生。「この曲“クリア”っていうけど、なかなかクリアできないんですよ!」と笑わせつつ、ゴスペル隊を加えた迫力たっぷりの陽性のサウンドで会場を彩って、煌びやかなフィナーレを築き上げた。

古巣レコード会社への帰還というトピックもあり、終始にわたり「此コガ原点!!」をアピールしたステージ。こうして原点を見つめ直したことで、新たな船出に向けた準備は万端に整ったと言えるだろう。それを示唆するように、ダブルアンコールでは黒いロングコートとハットに身を包み、さながら吟遊詩人のような出で立ちで登場した吉井。“クリア”のカップリング曲“ボンボヤージ”を最後に奏で、2時間半のステージを締め括った。「処女航海」を意味するタイトルが付けられた同曲は、雄大なサウンドと朗々とした歌声で旅立ちを綴ったスロー・バラード。どこまでも広がる大海原の風景を思わせるような音と歌が、今後も様々な進化を遂げていくだろう吉井和哉の歩みを後押しするように、力強く鳴っていた。(齋藤美穂)

■セットリスト

01.SPINNING TOE HOLD
02.真赤な太陽
03.WEEKENDER
04.ウォンテッド(指名手配)
05.おまえがパラダイス
06.サムライ
07.VS
08.夢の途中
09.あの日にかえりたい
10.百合コレクション
11.人形の家
12.シュレッダー
13.さらばシベリア鉄道
14.MUSIC
15.点描のしくみ
16.ビルマニア
17.SPINNING TOE HOLD

(encore)
18.襟裳岬
19.アバンギャルドで行こうよ
20.SUCK OF LIFE
21.FINAL COUNTDOWN
22.クリア

(encore 2)
23.ボンボヤージ

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