さユり デビュー2周年記念フリーライブ/お台場パレットプラザ

さユり デビュー2周年記念フリーライブ/お台場パレットプラザ - All photo by 北村勇祐 All photo by 北村勇祐
●セットリスト
M1 birthday song
M2 フラレガイガール
M3 夏
M4 十億年
M5 ミカヅキ


5月にリリースした1stアルバム『ミカヅキの航海』を携えての全国ツアー「ミカヅキの航海2017 ~夜明けの全国ツアー編~」が8月25日・大阪BIGCAT公演でファイナルを迎えたばかりの“酸欠少女”さユりは、翌8月26日には東京・お台場パレットプラザのステージにいた。
2年前の同日にシングル『ミカヅキ』でメジャーデビューを飾ったさユりの、デビュー2周年記念フリーライブ開催である。

観覧自由のフリーライブ&アルバム購入者のサイン会も実施、ということで、公開リハーサルの段階から1階部分に集まったファンはもちろんのこと、パレットタウンの2階・3階テラス部分からも、世代を超えた多くの人がステージを見つめている中、鮮やかな青のポンチョに身を包んださユりが、サポートキーボード:「ガスマスク2号」とともに舞台に登場。
さユり デビュー2周年記念フリーライブ/お台場パレットプラザ
「こんにちは、さユりです。今から歌を歌います。まず1曲目、私が10代最後に作った曲です」――そんな言葉とともに歌い始めたのは、アルバム『ミカヅキの航海』のラストナンバー“birthday song”だった。
《選ばれなかった命を/弔うことすら出来ないままで/私は今日も白々しく/生きている/歌ってる/顔の見えない誰かに謝りながら》という切実な詞世界が、そして《ハッピーバースディ/ハッピーバースディ/アンハッピーバースディ/トゥーユー》の伸びやかなリフレインが、聴く者すべての心のフィルターを内側から全開放するようなさユりのマジカルな歌声とともに響き渡り、一気にその場の空気を支配する。
メジャーデビュー2周年の「誕生日」の証を、自らの歌で今この瞬間に刻むような、最高の幕開けだった。

さユり デビュー2周年記念フリーライブ/お台場パレットプラザ
同期トラックとともに演奏した“birthday song”に続き、「こっぴどくふられちゃった女の子の歌」という紹介から流れ込んだRADWIMPS・野田洋次郎の提供曲“フラレガイガール”、さらに“夏”をさユりのアコギ&ガスマスク2号のピアノのみの編成で披露。
「《もうすぐ夏だ》(“夏”)って、もうすぐ夏も終わりですけど(笑)」と言いつつ、「2号さんと初めて一緒にライブをしたのが、2年前の昨日、『お台場夢大陸』で。その時は雨が途中で降ってきて――」とデビュー当時を振り返っていく。

そして、「次は、モード学園のCMソングにもなっているこの曲を――」というMCとともに歌い始めたのが“十億年”。
彼女が20代最初に書いたというこの曲の、《わたしたちは誰もが/なにかを失ってここへ来たらしい/0じゃなく空白をもって生まれたんだと》という悟りにも似た認識から、《わたしは/あなたは/この体は/巨大な巨大な奇跡だ》へと至る世界観を、ふたりの演奏とトラックのアンサンブルを絡み合わせながら、壮大な歌の風景として編み上げていく。

さユり デビュー2周年記念フリーライブ/お台場パレットプラザ
ここで「2号」が退場。舞台にひとり残ったさユりが「21年の中で、あなたと出会えたことが、すごく嬉しいです」とデビュー丸2年の「今」の想いを語る。
「私は自分のことを出来損ないだってよく言ってるんですけど。『こんな自分は嫌だなあ』って。でも、こんな私だから出会えたあなたがいて。きっとそんなあなたも、楽しいことばかりじゃなかったから、きっと何かが埋まらなかったから、私と出会って、音楽を聴いてくれて……そう思うと、どうしようもない痛みも、少しだけ愛せる気がしました」……ひと言ひと言嚙みしめるように伝える彼女の言葉に、観客は身動きも忘れたように聞き入っている。

「この前、ファンの方からもらったメッセージの中に、『酸欠少女でいてくれてありがとう』っていうのがあって。で、『酸欠少女』っていう漢字の上に、ひらがなでルビが振ってあって、『いばしょ』って書いてあったんですよ。それがすごく嬉しくて。ひとりだけじゃないって思いました。あなたが、私の居場所だから――完璧じゃなかったから、この場があります。私があります」

自らの心の空白/欠落と向き合いながら、その欠落そのものを前へ先へと進むための推進力に変え、さユり自身と僕らの空白を新たな希望で染め上げていく――という決然とした意志が、彼女の言葉から、何より1曲1曲の歌そのものから滲んでいた。
「こんな私だからできる方法で、あなたと向き合いたいです」と宣言した彼女が最後に歌ったのは、デビュー曲“ミカヅキ”だった。《欠けた翼で飛ぶよ 醜い星の子ミカヅキ》のフレーズを突き上げるさユりの凜とした歌声が、夏の終わりのむせ返るような熱気を貫いて、どこまでも目映く強く広がっていった。
さユり デビュー2周年記念フリーライブ/お台場パレットプラザ

「ミカヅキの航海2017 ~夜明けの全国ツアー編~」全公演ソールドアウトを受けて、9月22日には赤坂BLITZで追加公演の開催も決定しているさユり。
その歌はこの時代の「救い」として、まだまだ強く深く求められていくに違いない……そんな確信を十分に与えてくれる、珠玉のステージだった。(高橋智樹)
さユり デビュー2周年記念フリーライブ/お台場パレットプラザ

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