おいしくるメロンパン/渋谷クラブクアトロ

おいしくるメロンパン/渋谷クラブクアトロ - All photo by 木村泰之All photo by 木村泰之
9月27日に2作目のミニアルバム『indoor』をリリースし、全国8公演のスケジュールで始まった最新ツアー「indoorレコ発ワンマンツアー 〜お日様を浴びたい〜」(追加公演「〜お月様も浴びたい〜」も決定している)。大阪、名古屋を経て、この日は3本目にあたる東京・渋谷クラブクアトロである。活動開始から約2年、バンド史上初のワンマンツアーであるにも関わらず、クアトロをソールドアウトさせてしまうのは凄い。以下本文はネタバレ控えめにレポートを進めるけれども、今後の日程に参加予定の方は、閲覧にご注意を。
おいしくるメロンパン/渋谷クラブクアトロ
クールにスウィングする登場SEに、オーディエンスの手拍子が上乗せされて、ナカシマ(Vo・G)、峯岸翔雪(B)、原駿太郎(Dr)の3人が登場。ナカシマの柔らかなギターアルペジオが奏でられてパフォーマンスが始まる。ここで、あれっ?と思ったファンも多いのではないだろうか。3人で手を挙げて「どうも、おいしくるメロンパンです!」と口を揃えるお馴染みの挨拶が、ない。愛嬌とインパクトを兼ね備えていた挨拶だったので少し寂しくもあるが、それよりも、今までのライブとは何かが違うぞ、というムードを感じる。
おいしくるメロンパン/渋谷クラブクアトロ
前半戦は、MCもそこそこに曲また曲、と矢継ぎ早に繰り出して会場内の熱気をかき回す。3ピースという少人数編成の軽やかなギターロックでありながら、ジャズやファンクの豊かなグルーヴを内包し、クルクルと表情を変えてゆくアンサンブルが実にスリリングだ。青い心象に文学性を宿らせて歌うナカシマの声は、まるで少年のように透き通っているのだけれども、歌詞の物語と力強いアンサンブルに焚き付けられて今にも爆発しそうな、どこか危うく凶暴な一面も持ち合わせている。
おいしくるメロンパン/渋谷クラブクアトロ
『indoor』のリード曲でMVも公開された“look at the sea”が、恋心で世界のすべてを塗りつぶすように迸る。玄妙なギターワークでその思いに特別な意味を持たせる手捌きが見事だ。そして、街の甘い誘惑を立ち上らせる“caramel city”が、胸の中に巣食う退屈とせめぎ合う。拭えない後悔の念が浮かぶ“あの秋とスクールデイズ”の熱量は、音源とはまた別物だ。新作曲はこれまでのライブで披露されてきた楽曲も多いが、新旧の楽曲が前のめりな速いBPMで次々に届けられることで、一期一会の熱狂を育んでみせる。原は、新作『indoor』が前作『thirsty』とふたつでひとつであり、説明しきれなかった部分を補完する作品なのだと語っていた。
おいしくるメロンパン/渋谷クラブクアトロ
おいしくるメロンパン/渋谷クラブクアトロ
ときに自由闊達なリードベースを弾き倒し、積極的にステップを踏んで楽曲の肉体性を体現する峯岸は、ファンやスタッフ、多くの関係者に支えられて自信がついてきたと感謝の思いを口にする。3人の馴れ初めを語り出したのは、基本的に口数少なめのナカシマだ。ベース奏者としての峯岸の噂を耳にして、同じ大学に通っていた彼に声をかけたこと。当初はライブをやらずにスタジオに篭ってばかりいたこと。最初に出来た曲が新作収録の“桜の木の下には”だったこと(ちなみに2作目が“色水”)。峯岸と高校時代の同級生だった原が「バンドやろうぜ」とメールで呼びかけて、この3人が揃ったこと。こんなふうに話を聞いてみると、本当に『thirsty』と『indoor』が2作揃って、おいしくるメロンパンの始まりの物語を多くの人々に共有させてくれるのだと分かる。
おいしくるメロンパン/渋谷クラブクアトロ
そしてナカシマが、こんなふうにも語っていたのも印象深かった。「2年、バンドをやってきました。やりたくないことができない性格なんですよ。最初はライブやりたくないと思ってたんだけど、勝手に埋められてやるようになって。バンドが大好きなんだけど、みんなに受け入れられるのか悩んでたこともあって。価値が認められないと、音楽は続けられないから。でも、今はその悩みがないです。支えになっていると言うと軽い感じだけど、うん。みんなのおかげで、音楽ができています。これからも好きなように音楽をやっていくつもりだけど、こうやって好きになってくれた人は裏切らないので、ついてきてください」。
おいしくるメロンパン/渋谷クラブクアトロ
潔癖なぐらいに研ぎ澄まされた美意識は、アーティストにとって大きな武器だろう。人はそれを才能と呼ぶかも知れない。しかし、その美意識に貫かれた自分の価値観を守るばかりに、人々に向けて表現を伝えることができず苦しんでいる人もいる。美意識という才能は、諸刃の剣なのである。ナカシマの歌を、おいしくるメロンパンのロックを広く世に解き放ったのは、それに価値を見出したファンに他ならない。そんな思いを下地に生み出されたという新曲は、まるで自由のファンファーレのように鳴り響き、足かせを外されたバンドの創造性が思い切り炸裂する凄まじいナンバーであった。彼らは必ず凄いバンドになる。今後の札幌(10/27)、仙台(11/1)、金沢(11/7)、高松(11/14)、福岡(11/16)、そして東京追加公演(11/21)と続くツアー、事情が許す方はぜひ見届けてほしい。(小池宏和)

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