フォール・アウト・ボーイ @ 新木場STUDIO COAST

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超重要アクト群の来日がばんばん続いている。大阪、名古屋と連日こなしてきた今回のフォール・アウト・ボーイのジャパン・ツアーも折り返し地点で、東京2公演を残すのみ。今日はその1日目だ。FOB・ピートのレーベルであるDecaydance所属のヘイ・マンデーが、今回のツアーでは全公演をサポートしており、しかもこれが記念すべき初来日となっていた。

フロリダ出身の5ピース、ヘイ・マンデーは、昨年秋にデビュー・アルバムをリリースしたばかりの新星(日本盤は来春リリース予定)。紅一点ボーカリストのキャサディーが元気に飛び跳ねては腕を振り上げ、オーディエンスを煽りつつエモーショナルなポップ・サウンドを披露してゆく。女性ボーカルのパンキッシュなバンドということでよくパラモアとも比較されているが、パラモアよりもヘルシーでカジュアル、かつスポーティな印象を受ける。スローでメロディアスな美曲“Candles”などもかなりいい。あと、月並みな野郎意見で申し訳ないけど、とにかくキャサディーがかわいくて参った。力強いメロディでドライブしてゆくラストの“Homecoming”まで、みっちり30分強。堂々たるパフォーマンスを見せてくれた。

転換中のSEは、カニエなど含めロッカフェラ系のバウンシーなヒップホップが多い。こういうところもFOBのおもしろさであり、実は結構重要なポイントだとも思うのだが、それは後で触れるとしよう。さて、地割れのような歓声が上がり、いよいよFOB登場だ。オープニング・ナンバーは、前作『インフィニティ・オン・ハイ―星月夜』から“サンクス・フォー・ザ・メモリーズ”。キャップを被ったパトリックの声も好調なようだが、なにしろのっけからのオーディエンスのシンガロングが凄い。相乗効果かパトリックもボルテージを上げて吼える。続いて流麗なギター・アルペジオからヘヴィなリフに展開し、“スリラー”へ。そして“ア・リトル・レス・“シックスティーン・キャンドルズ”、ア・リトル・モア・“タッチ・ミー””でひときわ大きな歓声があがり、なんと冒頭からパトリックはボーカルをフロアに丸投げしてしまう。それをがっちりキャッチして歌い上げる満場のオーディエンス!素晴らしい。実は仕込みなんじゃないかというぐらいの完璧なシンガロングに脱帽である。“シュガー、ウィアー・ゴーイン・ダウン”ではヘイ・マンデーのキャサディーが飛び入りで登場し、豊かなハーモニーを重ねてはパトリック、ピートと楽しそうにハイ・タッチを決める。月並みな上にしつこくて本当に申し訳ないけど、かわいいです。うーむ、かわいいなあ。

さてさて、ピートが全力で「I DON’T CARE!」コールを巻き起こすと、いよいよ『フォリ・ア・ドゥ』モードに突入するFOB。ダンサブルなリズムに「アイドンケー♪」のコーラスが浮かび上がる。そしてなんだこりゃ、暗転して演奏だけが鳴り響くステージに、3人のギターとベースのボディでLEDが目映く光り輝いている。うはは、派手なんだか地味なんだかよくわからんけどおもしろい。そして来た、MJカバー“今夜はビート・イット”!…なのだが…あれ?お客さんのノリは、もちろん喜んでるけど今ひとつですか。そうだよなー、知らないよなーきっと。そちらで嬌声を上げたあなた、失礼ながら、結構なお姉さまかとお見受け致します。それそれこいつも歌おうよ、ビレーっ!そして“クーパーズタウンにヘッド・スライディング”。これは今回のライブで、『フォリ・ア・ドゥ』の本質に最も接近した瞬間になったと思う。同期モノを含めた重厚なアレンジ、パンクのスピードを投げうってファンキーに、また病的なサイケデリアを滲ませて進む演奏。その中でパトリックの歌はこれまでとはまたひと味違ったエモーションの熱を帯びてゆく。ビートとリフが渾然一体となったロックンロール式ソングライティングはFOBの元来の特徴でもあるのだけど、それがネクスト・レベルに押し進められた成果だ。FOBは恐らく、彼らのロックをメロディックなパンク/エモから引き離すことで、ロック本来のジャンルを踏み越えてゆくポピュラリティを取り戻そうとしているのではないだろうか。スピードや爆音のフェティシズムに頼る方法も、上っ面だけのミクスチャーでももはやダメだ。それより求められるのは、ロックならではの求心力の核を抽出してやる作業だ。FOBにはメロディと歌という武器がある。だからときにそれをパンク/エモという枠の外側へと取り出し、様々な角度から検証してみせているのである。成果はこの会場に広がるシンガロングからも明らかだろう。ロックは、感情は、本来もっと際限なく感染してゆくものなのである。豪華な客演とともに完成した曲群の、ライブでの再現が難しいのは残念だが、『フォリ・ア・ドゥ』はその点でFOB史上、重要な意味を持つ作品なのだ。

巨漢MCが乱入してラップというよりもアジり倒して去っていった“僕についてのばかげた歌”、リフに合わせてオーディエンスが印象的なクラップを決める“ディスロイヤル・オーダー・オブ・ウォーター・バッファローズ”、そしてスローなグルーブと幻想的なコーラスで聴く者を巻き込んでいった叙事詩“アメリカズ・スイートハーツ”。多様な楽曲でオーディエンスを魅了する新しいFOBの姿は本当に見事だった。ソングライティングの圧倒的な力量で「歌」に収束してゆくステージ。だが、これは相変わらずと言えば相変わらずなのだが、メロディとシンガロングに救われているものの、やはりより大きなポピュラリティを目指してゆくバンドとしては、演奏の危なっかしい場面が何度か気になった。本当に、FOBに残された唯一にして最大の課題はそこだと思う。それさえクリアできれば、彼らは世界でもトップを張るスタジアム・バンドにだってなれると思うのだけど。この愛すべきFOBファンたちと、どうかその場所まで走っていってくれ。(小池宏和)

1.THNKS FR TH MMRS(’07 2nd『Infinity On High』)
2.THRILLER(’07 2nd『Infinity On High』)
3.A LITTLE LESS SIXTEEN CANDLES, A LITTLE MORE“TOUCH ME”(’05 1st『From Under The Cork Tree』)
4.AMERICAN BOY Estelle’s cover/SUGAR, WE’RE GOIN DOWN(’05 1st『From Under The Cork Tree』)
5.THIS AIN’T A SCENE, IT’S AN ARMS RACE(’07 2nd『Infinity On High』)
6.I DON’T CARE(’08 3rd『Folie A Deux』)
7.BEAT IT(’08 3rd『Folie A Deux』)
8.HEADFIRST SLIDE INTO COOPERSTOWN ON A BAD BET(’08 3rd『Folie A Deux』)
9.THE TAKE OVER, THE BREAKS OVER(’07 2nd『Infinity On High』)
10.I SLEPT WITH SOMEONE IN FALL OUT BOY AND ALL I GOT WAS THIS STUPID SONG WRITTEN ABOUT ME(’05 1st『From Under The Cork Tree』)
11.DISLOYAL ORDER OF WATER BUFFALOES(’08 3rd『Folie A Deux』)
12.WHERE IS YOUR BOY(’03『I Take This To Your Grave』)
13.AMERICA’S SUITEHEARTS(’08 3rd『Folie A Deux』)

アンコール
1.DANCE, DANCE(’05 1st『From Under The Cork Tree』)
2.SATURDAY(’03『I Take This To Your Grave』)
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