miwa/横浜アリーナ

miwa/横浜アリーナ - All photo by KAORU SATOAll photo by KAORU SATO

●セットリスト
01. don't cry anymore
02. 君に出会えたから
03. アップデート
04. 441
05. super heroine
06. つよくなりたい
07. 夜空。feat.お客さん
08. Wake Up,Break Out!【リクエスト】
09. 泣恋
10. Chasing hearts
11. chAngE
12. Faith
13. We are the light
14. ヒカリヘ
(アンコール)
01. 春になったら
02. ミラクル
03. 360°
04. アコースティックストーリー(新曲・フルバージョン初披露)
05. 結-ゆい-


アコギの弾き語りで、驚くべき情報量とドラマティックな感動、そして巨大な一体感がもたらされる。一曲一曲で、彼女が歩んできた道のりの正しさを証明するライブであった。15公演がスケジュールされた「miwa acoustic live tour 2018 “acoguissimo 4”」のファイナルであり、また47都道府県制覇を目標に掲げ2011年から繰り広げられてきた「acoguissimo」シリーズの到達点=miwaの生まれ故郷である神奈川。なお、女性ソロアーティストによる横浜アリーナでの弾き語りライブは、今回が史上初となるそうだ。

miwa/横浜アリーナ

開演SEもなく、光量控えめのステージに登場したmiwaは、固唾を飲んで見守る大観衆を前にアコギをストロークさせ、2010年のデビューシングル“don't cry anymore”を歌う。彼女の傍の花瓶には、「決意」の花言葉を持つピンクのゼラニウムが挿してあった。いかに横浜アリーナと言えど、今の彼女ならば力強い発声で触れる者を圧倒するようなライブを行うことだってできる。しかし、今回のツアーはそうではなかった。完璧に空間を把握し、そこに思いを敷き詰めてゆくように、ベストの歌声、ベストの振動をコントロールして放つ。こんなふうに大きなステージに立つ前の、十代だった頃のmiwaと今のmiwaが、血の通った歌で地続きになって見えるのである。

miwa/横浜アリーナ

「遂にラスト、横浜アリーナだよ! 皆さん、盛り上がる準備はいいですか!?」と言葉を投げかけるmiwa。オーディエンスは緊張感から解き放たれたように総立ちになり、タオルを振り回して“君に出会えたから”の熱いチャントを歌う。磨き抜かれたソングライティングが勢いよく弾ける“アップデート”の弾き語りは見た目以上に難しいはずだし、ソウルフルな“super heroine”や“つよくなりたい”といった新旧のアルバム曲は、弾き語りのベーシックスタイルで「まだ何者でもなかった頃のmiwa」の物語を鮮やかに伝えてゆく。

つまり、足掛け8年の「acoguissimo」が一旦の区切りを迎える今回のツアーとは、超人的な才能を持つアーティスト=miwaの物語ではなく、多くの人々と同じ場所からアコギを携えて歩み出した少女=miwaの物語だったのだ。会場アンケート用紙を手に和気藹々と繰り広げる恒例「miwaに言いたいコーナー」や「miwaに聞きたいコーナー」では、巨大アリーナの距離感をものともせずに親密なムードを作り上げてしまう。各地の観光名所を歌詞に織り込んできた“ドライブソング”の横浜バージョンも、オーディエンスの協力を得て楽しく歌い上げていた。

miwa/横浜アリーナ

花瓶のゼラニウムが「希望」の花言葉を持つ白いトルコキキョウに変わり、“夜空。feat.お客さん”の一幕でこの日ステージに迎えられたのは9歳の女の子だ。「緊張するよねー。でも大丈夫! 私もずっと立ってるから!」とmiwaが笑顔で励まし、2人はデュエットへと向かう。音源でハジ→が歌ったパートは、譜割りが細かくて本当に難しいはずなのだが、こちらの心配をよそに堂々と転調もこなして歌う女の子、本当に凄かった。そしてmiwaはリクエスト曲の“Wake Up,Break Out!”で会心のスマイルを覗かせ、「acoguissimo 4」のために新調したマーティンのアコギで奏でる“泣恋”の柔らかなアルペジオが、明瞭なメロディの輪郭と弾き語りアレンジの面白さをたっぷりと伝えてくる。

miwa/横浜アリーナ

オーディエンスのコールを巻いて熱く届けられる“chAngE”や“Faith”の後、ボーカルにディレイ効果を噛ませて披露されるのは“We are the light”だ。「誰もが誰かの光、というメッセージを込めて作りました。今日、ここに来てくれた皆さんが、私の光です」。涙声でそう語るmiwaは、しかし凛々しく、誇らしげな表情を浮かべている。なんとも眩しい涙だった。そんなふうに、大観衆のエネルギーを吸い込むようにして弾き語りで放出する“ヒカリヘ”は、たった一人の決意と希望から始まったmiwaの物語が辿り着いた、現在地そのものであった。

miwa/横浜アリーナ

横浜アリーナという大会場で、ファンとの距離を詰めるように繰り広げられた弾き語りライブのアンコール。花瓶には、「友情・絆」を表す黄色いバラが。miwaは、アリーナ内の通路を歩いてぐるりと一周しつつ、歴代の「acoguissimo」で思い出深い楽曲を披露してゆく。客席では、バンドセットでお馴染みのメンバーたちや、音源制作に携わってきた人々も見守っている。そして、「acoguissimo」と人々のドラマをしたためた新曲“アコースティックストーリー”(既に先行配信もスタート)は、彼女の体験と思いが率直に綴られた美麗なナンバーに仕上げられていた。

miwa/横浜アリーナ

「弾き語りは私の原点であり、ずっとずっと大切なものなので、これからも続けていきたいと思います」。miwaがそう告げて歌うのは“結-ゆい-”だ。ソロの弾き語りから始まった物語が、最後にはmiwa自身の歌もギターもなく、必然の大合唱としてオーディエンスに委ねられる。思いが音楽に乗せて手渡される、素晴らしいクライマックスであった。なお、現在発売中の『ROCKIN’ ON JAPAN』2018年7月号では、「acoguissimo 4」彩の国さいたま芸術劇場公演(5月18日)の密着取材記事を掲載。弾き語りライブならではの、繊細なリハーサルの模様についてもレポートしているので、ぜひチェックしてほしい。(小池宏和)

miwa/横浜アリーナ
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする