サザンオールスターズ/NHKホール

サザンオールスターズ/NHKホール - All photo by 岸田哲平All photo by 岸田哲平

●セットリスト
01. 茅ヶ崎に背を向けて
02. 女呼んでブギ
03. いとしのエリー
04. さよならベイビー
05. せつない胸に風が吹いてた
06. 愛の言霊(ことだま) 〜Spiritual Message〜
07. SEA SIDE WOMAN BLUES
08. 汚れた台所(キッチン)
09. My Foreplay Music
10. 私はピアノ
11. 闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて
12. はっぴいえんど
13. 真夏の果実
14. 太陽は罪な奴
15. 涙の海で抱かれたい~SEA OF LOVE~
16. 栄光の男
17. 東京VICTORY
18. ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
19. 匂艶(にじいろ) THE NIGHT CLUB
20. HOTEL PACIFIC
21. みんなのうた
(アンコール)
EN1. DIRTY OLD MAN 〜さらば夏よ〜
EN2. LOVE AFFAIR~秘密のデート
EN3. ロックンロール・スーパーマン 〜Rock'n Roll Superman〜
EN4. 勝手にシンドバッド



記憶の中の温度や匂いを一瞬で呼び覚ますメロディと、バイタリティを迸らせる躍動感との交錯を前に、現実感を失いそうになるステージであった。1978年6月25日にシングル『勝手にシンドバッド』でデビューを果たしたサザンオールスターズが、めでたく40周年を迎えたこの6月25日・26日の2日間「サザンオールスターズ キックオフライブ2018 『ちょっとエッチなラララのおじさん』」。公式ライブの舞台としては初となるNHKホールで、各日3600人を動員する公演だが、今回レポートする26日には全国130の映画館でライブビューイングも行われた。2015年以来となるサザンのライブ、大きな注目を集めるのも当然といったところだろう。

開演時の影アナでは、デビュー当時のサザンが熱く、面白おかしく紹介される。この名調子は誰かと思いきや、「申し遅れました、わたくし、元NHKの有働由美子でございます」の言葉でオーディエンスは大喜びである。昨年の『紅白歌合戦』以来となる桑田佳祐(Vo・G)との再会を語りつつ、見事な煽りでサザンを呼び込むのだが、「X JAPANのみなさんです!」という紹介(SEも“Forever Love”)のくだりで5人はずっこけるのだった。しかし、桑田がギターをストロークさせて歌い出す“茅ヶ崎に背を向けて”は、原由子(Key・Vo)と記名性の塊のようなボーカルをスイッチしつつ、演奏開始30秒で「サザンのライブ」の手応えをもたらしてしまう。《おかげさまで40年 ここは天下のNHK》と歌詞を差し替えるサービス精神も抜かりない。序盤はデビュー前からのレパートリーを配した選曲で、3曲目には早くも神秘的なキーボードの音色が陶酔感を膨らませる名バラード“いとしのエリー”が届けられる。ソウルマン・桑田が本領を発揮する力強いフィニッシュには、大喝采が巻き起こっていた。

サザンオールスターズ/NHKホール
桑田はあらためて挨拶を投げかけながら、冒頭の有働アナのナレーションを受け、NHKの音楽番組『レッツゴーヤング』(収録はNHKホール)出演時のエピソードを交えつつデビュー時を振り返る。“せつない胸に風が吹いてた”や、鎌倉方面から江ノ島を望む美しい夕暮れの映像を用いた“SEA SIDE WOMAN BLUES”、そしてブルージーな熱をバンドサウンドとまくしたてるボーカルに込めた“汚れた台所(キッチン)”など、シングルのカップリング曲やアルバム曲も数多く含めたセットリストで、隠し味的に施された現代的なアレンジが効いている。過去の楽曲たちが、今のサザンのサウンドの深みに引き込んでくれるようだ。

原が歌う歌謡メロの“私はピアノ”にメンバーが楽しくサイドステップを踏んだところで、サポートメンバーを紹介し、そして5人があらためて口々に挨拶する。「やっぱりサザンは楽しいねー! めざせ50周年!!」(松田弘/Dr・Vo)、「あのねえ……このバンドにパーカッション、いるかなあ? でもね、サザンを最後尾から支えていきます!」(野沢秀行/Percussion)、「40年前、いろいろ迷いました。教職試験も受かってた。でも、その後の僕の人生、幸せです」(関口和之/B・Vo)、「還暦過ぎてバンドやってるおばさんていうのは、私ぐらいになっちゃった!」(原)と、笑いを誘いながらもそれぞれにキャリアへの思い入れと自負を感じさせている。「こう見えてもね、2018年、新曲がありまして」と披露された、映画『空飛ぶタイヤ』主題歌“闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて”は、スーツ姿の男女ダンサーが登場し拳を振りかざしながらのパフォーマンスだ。日本経済を支える大企業の不祥事という、ドロリとした現代社会の闇を捉えたこの曲は、サザンの新章開始を告げる1曲になった。ここから、前作アルバム『葡萄』収録曲“はっぴいえんど”へと連なる名演の流れは、往年の名曲たちにもまったく引けを取らない、現在進行形のサザンの素晴らしさで喝采を誘う。そして曲間に潮騒のSEを挟みながら、次々に人気曲が畳み掛けられるのだった。

サザンオールスターズ/NHKホール
生み出された名曲たちが凄いのか、それらを生んだサザンが凄いのか。ふたつの意味は同じようで、少し違っている。演奏を繰り広げながら、バンドはむしろ名曲たちにエネルギーを分け与えられるように、グルーヴの濃さを増し、爆発力をもって珠玉のメロディを輝かせていった。オーディエンスも、“太陽は罪な奴”のモータウンビートが転がり出すより早く、楽曲を迎え撃てとばかりに手を打ち鳴らしている。テレビ放送のような「しばらくお待ちください」の画面を用いてメンバーが息を整えるユーモラスな一幕もあったけれど、凄まじい歌声の盛り上がりを見せた“東京VICTORY”の直後にも、桑田はたった今ライブが始まったかのように軽快なステップを踏み“ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)”を歌うのである。本編ラストは、《あの日から何度目の夏が来ただろう》と歌い出されるロマンチックな一編を経てからの“みんなのうた”だ。紙吹雪が舞う、完璧なクライマックスであった。

アンコールでは、沸々とロマンチックにディスコグルーヴを描き出す“DIRTY OLD MAN~さらば夏よ~”を届けてくる。この曲や、本編中に披露された “HOTEL PACIFIC”、“闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて”は、8月1日(水)リリースのプレミアムアルバム『海のOh,Yeah!!』でアルバム初収録される。最後の最後に、野沢のラテンパーカッションが目一杯スパークして始まる“勝手にシンドバッド”では、まるでデビュー時の彼らの映像と競うように狂騒を巻き起こすのだった。幾多の名曲を生み出し、長い道程を歩んできたサザンにとっての最大のライバルとは、もしかすると40年前の、未知の可能性を秘めた若きサザンなのかもしれない。8月12日(日)には、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018(13年ぶり)にGRASS STAGE大トリとして出演予定。今からめちゃくちゃ楽しみだ。(小池宏和)
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