チャットモンチー/日本武道館

チャットモンチー/日本武道館 - Photo by 古溪一道Photo by 古溪一道

●セットリスト
[第一部]
01.CHATMONCHY MECHA
02.たったさっきから3000年までの話
03.the key
04.裸足の街のスター
05.砂鉄
06.クッキング・ララ feat. DJみそしるとMCごはん
07.惚たる蛍
08.染まるよ

[第二部]
09.majority blues
10.ウィークエンドのまぼろし
11.例えば、
12.東京ハチミツオーケストラ
13.さよならGood bye
14.どなる、でんわ、どしゃぶり
15.Last Love Letter
16.真夜中遊園地
17.ハナノユメ

[Encore]
En1.シャングリラ
En2.風吹けば恋
En3.サラバ青春


チャットのお客さんはほんまに面白くて、優しい人がいっぱいで。お客さんって、バンドを映す鏡やっていう話をよく聞くやん? だから……そういうことなんかなあと思って」と橋本絵莉子が満場の観客に語りかけたのに続けて、「バンドを映す鏡だけあって、みんななかなか一生懸命ついてきてくれて……根性あるよ。ありがとうございました!」と呼びかける福岡晃子の言葉に、惜しみない拍手喝采が日本武道館一面に広がっていく――。

チャットモンチー/日本武道館 - Photo by 上山陽介Photo by 上山陽介

ミニアルバム『chatmonchy has come』でメジャーデビューを飾ってから13年。2008年・2015年に続く3度目の日本武道館ワンマンにして、チャットモンチーの「完結」=活動終了前最後のワンマンライブとなったこの日のステージ。
7月21・22日に地元・徳島で行われる自身主催フェス「チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2018 ~みな、おいでなしてよ!~」が控えてはいるものの、「チャットモンチー最後のワンマン」という寂しさが武道館の客席のそこかしこに漂う中、場内が暗転するとともに舞台を覆う白幕に「私たちのこれまでと 皆さんのこれからが交わる 輝かしい1日になりますように」のメッセージが映し出される――。大歓声の中、白幕がゆっくりと上がり、ラストワンマンはいよいよ開演の時を迎えた。

チャットモンチー/日本武道館 - Photo by 古溪一道Photo by 古溪一道

舞台背面の客席にまでびっしりと観客が詰めかけた中、「CHATMONCHY」の文字が描かれた巨大なオブジェが左右に分かれた下から橋本&福岡が登場。客席に手を振り、舞台中央で握手を交わした後、本編前半「第一部」では6月にリリースしたばかりのラストアルバム『誕生』の楽曲をメンバーふたりだけの「メカ編成」で立て続けに披露していく。
“たったさっきから〜”のハイパーな音像を、キーボード&ドラムを操りながら体現していく福岡。“the key”では長尺のバリトンギターを構えて重低音のサウンドと涼やかなメロディを武道館いっぱいに鳴り渡らせていく橋本……といった具合に、1曲ごとに楽器と編成を変えながら、その音楽的な挑戦精神が刻み込まれた楽曲群をひとつひとつ演奏していく。「新しいアルバムで、私が歌詞を書いた曲をやりたいと思います。徳島のことから、今のことまで書いた曲を――」という福岡の言葉とともに響いた“裸足の街のスター”、元ドラマー=高橋久美子作詞による“砂鉄”の《好きでも嫌いでも 好きさ》といったフレーズのひと言ひと言を噛みしめるように、オーディエンスはじっとその歌に聴き入っていく。

チャットモンチー/日本武道館 - Photo by 古溪一道Photo by 古溪一道
チャットモンチー/日本武道館 - Photo by 上山陽介Photo by 上山陽介
チャットモンチー/日本武道館 - Photo by 上山陽介Photo by 上山陽介

「ここで、スペシャルゲストを呼びたいと思います!」という橋本のコールとともにDJみそしるとMCごはんがステージに登場。「We Love!」「CHATMONCHY!」のコール&レスポンスから“クッキング・ララ”へ流れ込んで、3MCスタイルで会場一丸のクラップを巻き起こしていく。
福岡「ここまで味わったことのない気持ちじゃない?」
橋本「うん。なんか、とっても不思議な気持ち」
福岡「実際、ここに立つまでどういう気持ちになるかわからんかったけど。味わったことないから、マジで。形容する言葉が見つからないっていうか……みんなに見守られてる感じがします。来てくれてありがとう!」
そんな言葉とともに、「昔の曲やるね」とデビュー前の楽曲“惚たる蛍”のイントロを橋本がアコギで奏でると、会場から驚きと感激の声が巻き起こる。さらに、エレキギターに持ち替えた橋本&ドラム:福岡の編成で“染まるよ”を決然と響かせきったところで、舞台は再び白幕に覆われていく。

チャットモンチー/日本武道館 - Photo by 古溪一道Photo by 古溪一道
チャットモンチー/日本武道館 - Photo by 古溪一道Photo by 古溪一道
チャットモンチー/日本武道館 - Photo by 上山陽介Photo by 上山陽介

2005年のデビュー当時から現在までのヒストリー映像が映し出された後、白幕には指揮者スタイルの福岡のシルエットが。「第二部」の幕が上がると、橋本&福岡とともにステージにいたのは、なんと6人編成のストリングスセクションだった。
メンバーふたり+ストリングス6人の編成(橋本の命名によれば「チャットモンチー・アンサンブル」)で“majority blues”(橋本:ボーカル、福岡:指揮)、“ウィークエンドのまぼろし”(橋本:ボーカル&ギロ、福岡:コーラス&パーカッション&バードホイッスル)、“例えば、”(橋本:ボーカル&アコギ、福岡:ドラム&コーラス)と自らのキャリアを横断するかのように初期曲も最近の楽曲も織り交ぜながら、まったく新しい音像とともに武道館の大空間に響かせていく。
「チャットモンチー、ついにストリングスと共演です! すごいねえ、感動しちゃう。こういう音楽ができたことを幸せに思います」という福岡の言葉に、高らかな拍手が広がる。

チャットモンチー/日本武道館 - Photo by 古溪一道Photo by 古溪一道
チャットモンチー/日本武道館 - Photo by 古溪一道Photo by 古溪一道

ストリングスのメンバーひとりひとりにまで丁寧にニックネームを命名し、ストリングスのアレンジ担当が『共鳴』当時の「乙女団」のひとり=世武裕子であることを明かしたところで、さらなるゲストとして舞台に招かれたのは、同じく『共鳴』を「男陣」としてサポートしたドラマー=恒岡章! 「この9人で、私たちが上京した時の曲をやりたいと思います」(福岡)と流れ込んだ“東京ハチミツオーケストラ”のダイナミックなサウンドスケープが、武道館を圧巻の歓喜と高揚感で包んでいく。

チャットモンチー/日本武道館 - Photo by 上山陽介Photo by 上山陽介

ここで「アンサンブル」の6人が退場、橋本/福岡/恒岡の3ピーススタイルで“さよならGood bye”、“どなる、でんわ、どしゃぶり”、“Last Love Letter”、“真夜中遊園地”……とチャットモンチーのオルタナティブサイドを凝縮したような楽曲のを畳み掛けていく。再びストリングスチームを迎え本編最後に披露したのは、『chatmonchy has come』から“ハナノユメ”。一面のクラップとともに響く歌声とサウンドが、そして最後のワンマンの終わりを惜しむように沸き起こるコール&レスポンスが、武道館を熱く満たしていった。

チャットモンチー/日本武道館 - Photo by 上山陽介Photo by 上山陽介
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アンコールではもう一度3ピース編成で登場、恒岡の4つ打ちリズムと「アンコールはみんなで、この歌を叫ぼうじゃないか!」の福岡のコールとともに突入したのはもちろん“シャングリラ”! 炸裂する銀テープのキャノン砲以上に眩いメロディが、晴れやかなシンガロングを呼び起こしていった。
そのまま間髪入れずに“風吹けば恋”の加速感へとつないで武道館を揺らしたところで、恒岡が退場。ステージに残った橋本&福岡が舞台前面に腰掛けて向かい合う。
あふれそうな感情をここまで懸命にこらえていたふたりだが、「たぶんな、今優しい言葉かけられたら、もうえっちゃんヤバい!」と言っているそばから福岡が先に涙をあふれさせ、橋本も感極まった表情を見せる。武道館が一気に寂寞感と涙混じりの歓声に包まれる。
福岡「……私がヤバかったわ!(笑)。ほんまにしゃべれんくなるとは思わんかった」
橋本「うん。歌うだけで精一杯」
福岡「ほんまに楽しかった。ありがとう!」
そんなふたりの言葉に応えて、ひときわ高らかな拍手喝采が降り注いでいった。

チャットモンチー/日本武道館 - Photo by 古溪一道Photo by 古溪一道
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「最後の曲になりますけども。『もしかしたら歌えないかも』って考えて……歌詞を出しますので、みんなで歌ってほしいなって」(橋本)
そんな言葉とともに、福岡の奏でるピアノとともに橋本が歌い上げたのは“サラバ青春”だった。《きっといつの日か笑い話になるのかな/あの頃は青くさかったなんてね》……頰に涙を光らせ、時折声を詰まらせながらも、オーディエンスの合唱とともに橋本は最後まで気丈に歌いきってみせた。演奏を終え、手を取り合って一礼した後、ここまでの道程を讃え合うように泣きながら抱き合う姿に向けて、割れんばかりの感激と感謝の声が客席から沸き起こっていった。

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ふたりが姿を消した後、暗転した会場で白幕に映し出されたメッセージは「CHATMONCHY is FOREVER」。チャットモンチーというバンドが日本のロックシーンに/ポップミュージック史に残したものの大きさを改めて浮き彫りにするような、珠玉の一夜だった。(高橋智樹)

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