●セットリスト
1. OLE!!
2. BIG UP
3. Japanese Pride
4. やってみよう
5. THANX
6. Drive
7. CHEEKY
8. いいから
9. SLOW
10. りんどう
11. ここから(アコースティック)
12. ともに
13. 雨あがり
14. ヒューマン
15. Hey Lady
16. オドルヨル
17. サブマリン
18. シグナル
19. Everybody!!
(アンコール)
EN1. 花火
EN2. TRACE
EN3. これだけは
「Everybody!! Tour」期間中の3月21日に発表された、メットライフドームにおけるファイナル。3万5千人×2日間で7万人(ソールドアウト)を動員する、WANIMA初のドームワンマンにしてキャリア最大規模のステージである。なお、メットライフドームでのアリーナスタンディングライブは史上初。もちろん、開催が発表されたときには、デビューから4年足らずでここまで来た、という感慨があった。でも、当日の会場のムードは決して「到達点」ではなかった。ここでは、2日目の模様をレポートしたい。
開演の5分前から、KENTA(Vo・B)、KO-SHIN(G・Cho)、FUJI(Dr・Cho)の3人がカウントダウンのビデオの中でわちゃわちゃとプリクラを撮ったり海に飛び込んだり、シャワーがわりにバケツの水をかぶったりしているわけだが、お馴染みのSE“JUICE UP!!のテーマ”で登場するとひときわ大きな歓声が上がる。1曲目“OLE!!”が華々しく鳴り響くや否や、アリーナに大きな水柱が立って飛沫が降り注ぎ、音玉が盛大に炸裂するのだった。ギラギラとして重厚なサウンドの“BIG UP”がパーティ性を加速させ、カラフルに明滅するLEDやレーザーの演出も目に鮮やかだ。
「これだけ人がいると、YouTuberじゃなかとね? という人がいるかもしれん!」と3人がハーモニーで「WANIMA〜♪」と自己紹介して、KENTAは夏の風物詩=すいか割りにチャレンジ。花道の溝を手探りしながらまっすぐ向かっていくのはあからさまなズルだったけれど、割りっぷりは見事だ。序盤からたっぷりと遊び心を盛り込み、華やかなライブ空間を作っておきながら、“Japanese Pride”でがっちりとパンクスピリットを継承しておくことも抜かりない。《待ちに待ったこの晴れ舞台 雲の上のあいつも笑う》の歌詞に力を込める“THANX”や、床を叩きながら熱唱する“Drive”と、猛烈なスピードで濃いエモーションを共有させようとするWANIMA。それに気圧されることなく、がっちりと食らいついて歌声を上げる3万5千人も凄い。これだけ大きな会場のオーディエンスが、歌の一点に寄り集まろうとする意志を感じさせている。
FUJIのモノマネコーナーから傾れ込む“いいから”で猥雑なグルーヴを振りまくと、なんと3人の立つステージが台座ごと回転し、そのまま花道をアリーナ中央まで移動させるというギミックが発動。そこから歩いてライトスタンド寄りの赤いサブステージに移動し、ハンドウェーブを誘いながら“SLOW”を披露する。凛とした生き様を問う新曲“りんどう”では、誰からともなくスマホのライトが灯されて美しい。ここでKO-SHINがトイレに走るというハプニングもあったけれど、レフトスタンド側に用意された小さな畳敷きのステージ(KO-SHINが上京して初めて住んだ部屋をイメージ)では、原点を振り返るようにアコギとパーカッションのラテンポップ風アレンジで“ここから”を届けてくる。WANIMAのアコースティックセットは本当に素晴らしい。
「WANIMAより下の世代の人、むかつく先輩とか上司、おるよなあ。でもそこはグッと堪えて、WANIMAとともに生きていってください。WANIMAより上の世代の人、皺も増えて体が動かなくなって、お腹に付いた肉はなかなか落ちないけど、WANIMAみたいにまっすぐな青年もおるけん、ともに生きていってください」。ただ若者たちのカリスマではない、年配者に可愛がられるだけの渋いロックバンドでもない、実際にこの日の会場がそうだったように、あらゆる世代の人々が集う「祭り」の場を、WANIMAは作り上げている。「あーあ♪」の大合唱から始まる“ともに”で再び可動式ステージに乗り込み、“ヒューマン”の最後にはKO-SHINの素晴らしいギタープレイが眩いエネルギーを放射する。“Hey Lady”は、今回もゼロコンマ数秒で音楽の解放を促し、アリーナを揉みくちゃにしていた。ドーム一面の壮観なウェーブを巻き起こし、ステージに青白い火球が吹き出す“サブマリン”の淫靡な爆発力も強烈だ。
「まだ歌を届けたい人がいる。まだみんなに見せたい景色がある。哀しい思いをした人、苦い思いをした人、新しいことにチャレンジしている人もいると思います。行けるとこまで行って、ダメやったらWANIMAのところに戻ってきてください」。KENTAはそんなふうに告げて、終盤の“シグナル”へと持ち込んでいった。大掛かりな演出にも見劣りしない、この曲がアンセムとしてメロディと歌詞を分かち合われる光景には、震えるような感動を禁じ得なかった。そして本編最後に披露されたサヨナラホームランのような“Everybody!!”では、3万5千人が満面の笑顔で駆け抜けてゆく。
アンコールの1曲目は、ドームの天井に美しいグラフィックが投射される“花火”だ。そして「最近、彼女にフラれた人!」と挙手を募り、男子オーディエンスのリクエストに応えて“TRACE”(涙のリクエスト過ぎる)を放つ。最後の最後には、大量のテープが降り注ぐ“これだけは”の大合唱である。我先にとメロディを奪って歌うオーディエンスの熱唱ぶりは、ドーム公演でもまったく変わらない。「まだ歌を届けたい人がいる」とKENTAは言った。この広大なドーム一杯の人々の、夏の暑い日の光景さえも、彼らは思い出の1ページとして胸の内に仕舞い、さらにその先へと進んで行くのだろう。(小池宏和)
終演後ブログ