崇高ささえ感じさせるプレイから、ここ日本では「神」と呼ばれるほどの天才ギタリスト=マイケル・シェンカー。80年代の初め頃は、地方の中学校の机にも、M,S,Gの3文字にツートーンのフライングVを組み合わせたロゴマークが落書きされていたりして、本当に大人気だったのだ。あれから40年近くの歳月を重ね、何度かの浮き沈みを経たマイケルだが、ここにきて自身が築いたレガシーを積極的に再訪し、自身を活性化させることに成功している。2016年には、その集大成的事業の決定版とも言えるマイケル・シェンカー・フェストを立ち上げ、彼のキャリアを支えた3人のシンガー、ゲイリー・バーデン、グラハム・ボネット、ロビン・マッコーリーをフィーチャーする形で日本公演が実現。翌2017年にもラウドパークのヘッドライナーを含めた再来日ライブを行ない、たいへんな盛り上がりを見せた。
残念ながら個人的に都合がつかず、昨年と一昨年には行けなかったので、こうやって三たび実現してくれて、ついに見ること叶ったのは実に嬉しい。しかも、今年はマイケル・シェンカー・フェストとしての新作アルバムを完成させ、そこでは前述の3人に加え、マイケル・シェンカーズ・テンプル・オブ・ロックで活動をともにしたドゥギー・ホワイトも加えて総勢4人のボーカリストが参加しており、その編成を反映させた今回のコンサートは、まさにスペシャルの上をいく超スペシャルな内容となった。
この夜のショウは、ドゥギーから始まって、ロビン、グラハム、ゲイリーと、時代を遡るような感じで数曲ずつマイクをつないでいくという大まかな流れ。ただ、スコーピオンズに提供したナンバー“免罪の日"で幕を開けたあと、本来ならクライマックスにとっておくべき必殺曲“ドクター・ドクター"を2曲目にやって、いきなり3人がかりで歌ってしまうなど、出し惜しみのない攻勢に、オーディエンスは序盤から大熱狂。途中にも複数のシンガーが登場して交代で歌ったり、バック・ボーカルをとったりという贅沢な場面は、何度も見られた。
新譜からのフレッシュなナンバーを適度に挟みつつ、次々に代表曲が演奏されていって、この日はなんと30曲を披露。19時きっかりに始まったショウは、21時半を超えるまで繰り広げられた。この長丁場を、ほとんど休憩らしい休憩もとらず、ひたすら流麗なソロ・プレイと、そうしてない時には丁寧なバッキングを弾き続けたマイケルの姿には、あらためて本当に「ギターの神」を見た気がした。2012年と2014年に中野サンプラザで見た時より、生命力のようなオーラがハッキリと増していたと思う。現在の彼の演奏を生で聴いたことで「ギター・ソロってのは、ただ早く弾けばいいというものではない」という真実が、今更のように理解できた。
それから、ネクタイにワイシャツ(登場時はスーツ)、オールバックの短髪にドロップのサングラスという姿のグラハム・ボネットが、思った以上に元気な声を聞かせてくれたのも嬉しかった。これまた名曲“アソート・アタック"のサビで物凄く高いキーを歌うところ、さすがに下げてはいたもののフロアに任せ切らず自力で歌ったところにもグッときた。あと、全体の演奏をしっかり支え続けたベースのクリス・グレンとドラムスのテッド・マッケンナの2人も素晴らしかったし、あんまりみんな見てなかったかもしれないけど、サイド・ギターとキーボードで地道なサポートを続けたスティーヴ・マンにも拍手を送りたい。(鈴木喜之)
<SET LIST>
1. Holiday
2. Doctor Doctor
3. Live And Let Live
4. Vigilante Man
5. Lord Of The Lost And Lonely
6. Take Me To The Church
7. Before The Devil Knows You’re Dead
8. Into the Arena
9. Bad Boys
10. Save Yourself
11. Anytime
12. Heart And Soul
13. Love is not a Game
14. Warrior
15. Captain Nemo
16. Dancer
17. Desert Song
18. Night Moods
19. Assault Attack
20. Searching for a Reason
21 .Coast To Coast
22. Are You Ready To Rock
23. Attack Of The Mad Axeman
24. Rock My Nights Away
25. Messin’ Around
26. Armed And Ready
27. Rock Bottom
(encore)
28. Shoot Shoot
29. Natural Thing
30. Lights Out