●セットリスト
01. WHO'S GONNA SAVE US
02. AFTER LIGHT
03. FAKE DIVINE
04. INSIDE OF ME
05. DEVIL SIDE
06. TWO FACE
07. SET IN STONE
08. ZIPANG
09. OUT
10. MAD QUALIA
11. SICK
12. DON'T HOLD BACK
13. LION
14. ANOTHER MOMENT
15. MIDNIGHT CELEBRATION II
16. Duality
17. AHEAD
18. GLAMOROUS SKY
19. ORDINARY WORLD
「2年前ね、ここでVAMPSが終わってから、ここまで走ってきました。もっともっと君たちと深まって、いいライブをしようと思ってね、もっともっとみんなに理解してもらおうと思って、気持ち込めてアルバム作って。ライブは何本やったかわかんない、たぶん、2年で150本ぐらいやったかなあ……」。VAMPSの活動休止、ソロ再始動を経て、アルバム『ANTI』をリリースしたHYDE。リスタートの集大成とも言える今回の「HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL」にあったのは、オーディエンスとのかけがえのない絆、そしてHYDEの純然たるロック観だ。反抗とは、あくまで結果のひとつである。まわりの規定と自分の考えが一致しないとき、ただ流されるべきではないということ。大事なのは自分のモノサシに従うこと。そういう反抗の果てに、自由な景色を獲得することができるのだ。それを原罪と呼ぶならば、ロックはまさに、原罪の音楽なのかもしれない。
満場の幕張メッセが17時を迎えたとき、スクリーンに時計が映し出された。その数字が「16時66分」、つまり「666」を刻んだ瞬間、開演の号砲が打ち鳴らされる。“WHO'S GONNA SAVE US”を歌い始めたHYDEは、舞台セットの一部であるパトカーの上に座り、顔半分を黒いマスクで覆っている。「さあさあ、やっちまおうぜ幕張!」と叫び、“AFTER LIGHT”へ。いきなり壮絶なシンガロングを巻き起こすと、“FAKE DIVINE”を畳み掛ける。ブラックライトを浴び、蛍光色を発するマスクと瞳。ゾクゾクするような演出のなか、マイナー調のヘビーなロックですさまじい熱狂を生む光景は、なんとも痛快で、すでに感動的ですらあった。
「ようこそ『ANTI FINAL』へ。今日は楽しみでしょうがない。俺たちが作ってきたよな、『ANTI』は?! よし、じゃあ観せてもらおうか。かかってこい!」、そう煽ってからのHYDEはギア全開。“INSIDE OF ME”、“DEVIL SIDE”と、VAMPSの楽曲も地続きのものとして組み込みながら、マスクを剥ぎ取って“TWO FACE”を披露。ときに地面へ伏せるなど全身を全力で使いながら表現する姿に胸がアツくなる。雨音と銃声のSEを交えつつ、“SET IN STONE”に入ると、林檎と蛇による『ANTI』の象徴的デザインが描かれた旗を背負い始める。さらに口に咥えた銃を発射し絶命、という演出にて曲をシメた。
中盤は一転、美麗なキーボードの前奏から“ZIPANG”へ。身悶えするようなハイトーンボイスで恍惚へ誘うと、ギター&レスポンスを経て“OUT”を披露。ライブで育ててきた成果が、シンガロングの花となって咲き誇った。「幕張ちゃん、どうよこれ。すごくいい眺めだ。『ANTI』が出て半年。こんだけみんなに愛されるとは思わなかったね」と感慨に浸りながらも、「カオスを観せてくれ、芸術的なカオスを観せてくれよ!」と前のめり。そのまま“MAD QUALIA”へなだれ込む。続く“SICK”ではフロアの柵をよじ登り、サークルや大合唱を促すハッチャけぶり。グングン増していく盛り上がりに、“DON’T HOLD BACK”の最後で満足げな笑顔を一瞬こぼしたのだった。
ラストスパートはまさに疾風怒濤! ステージ上で仰向けになり、咆哮にてキーボードと掛け合った“LION”。グルーヴと明るいメロディで幕張を揺らした“ANOTHER MOMENT”。スタンディングフロアの隙間を縫い、中央付近で観客と手を繋ぎながらブチかました“MIDNIGHT CELEBRATION II”。最後は金属バットを手に、パトカーを力の限り叩き壊し、そのままステージを後にしたのだった。
アンコール。HYDEが姿を現したのは、客席右側の通路だった。しかもCO2ガスを噴射し、お客さんに浴びせながらのサプライズ登場。ステージへ戻ると再びバットを持ち、金属缶を殴りつけながら(そのために缶はしっかりマイキングされていた)、スリップノットの“Duality”をカバーする。さらに「喰い尽くそうぜ!」と“AHEAD”へ突入。自らギターをかき鳴らす姿はロックスターそのものだった。間髪入れず“GLAMOROUS SKY”にて圧巻のクライマックス、思わず「Yeah、すげえ!」と口にした。
ここで少しブレイク、穏やかに語りかける。「すげえいいもん観せてもらった。嬉しい、もう君たちが本当にかわいくてしょうがないよ」。それを受け、客席にスマホのライトがひとつずつ点灯していく。「いい眺めだよ……あのね、ただの光じゃないんだよね。全部意味がある。僕は好きな曲を作って、カッコいいと思うライブをやってるだけなんだけど、こういう良き理解者がいてくれるからライブができる。ありがとう」。「2年経って、ここまで戻ってきて、あとは突っ走るだけだと思ってます。ただ僕はね、そんな強くないんでね。みんなの援護がないと走れないんですよ。それがあれば俺、真っ暗闇のなかで絶対何か掴むから。それを期待して待っててください」。そして、“ORDINARY WORLD”を万感のうちに贈り、すべてのセットリストを締めくくった。去り際、「また帰ってくるからな! 首洗って待ってろよ!」と言い、HYDEは投げキスをしたのだった。(秋摩竜太郎)