sumika/オンラインライブ「Little Crown 2020」

sumika/オンラインライブ「Little Crown 2020」 - All photo by 後藤壮太郎All photo by 後藤壮太郎

●セットリスト
1.Answer
2.フィクション
3.ふっかつのじゅもん
4.イコール
5.ファンファーレ
6.ゴーストライター
7.エンドロール
8.Summer Vacation
9.絶叫セレナーデ
10.MAGIC
11.明日晴れるさ
(アンコール)
EN1.雨天決行


9月25日、sumikaとしては初のオンラインライブ「Little Crown 2020」が開催された。本編で片岡健太(Vo・G)も触れていたが、sumikaのライブは今年2月以来、ワンマンでのライブに至っては昨年11月以来となるため、10ヶ月以上の間隔が空いていたこととなる。本来ならば春には全国アリーナツアーが行われる予定だった。コロナ禍によりすべて開催見合わせとなってしまったのだが、そのやりきれない思いを、この日sumikaはポジティブなエネルギーに変えてみせてくれた。とにかくsumikaの音楽の楽しさ、豊かさがぎゅっと凝縮された最高のライブだった。
彼らが「Little Crown」と銘打つライブは2014年から不定期で行ってきたもので、通常のワンマンとは異なり、ゲストミュージシャンを迎えたり、会場のステージセットをイレギュラーなものにしたりと、普段のライブではできない様々な趣向を凝らしたものだ。この初オンラインライブを「Little Crown」にしたことにも、もちろん深い意味があった。

開演時刻になり、ステージの様子をとらえる映像が流れ始める。ギターの音が響いている。でもそこにいるのは片岡でも、黒田隼之介(G・Cho)でもなく、ピエロの親子。父親が爪弾くギターの音色が広い空間に響き渡り、おお、今回はサーカスのイメージのセットか、と思うも、すぐにここが本物のサーカス会場、その広いテントの中だと気づく。なんて粋な演出なのだろう。
片岡と小川貴之(Key・Cho)が気持ちのいいハーモニーで歌い出し、“Answer”での幕開け。イントロとともに「sumika、始めまーす!」の片岡の宣言。メンバー4人に加え、ベースの井嶋啓介、さらにホーン隊の華やかなアンサンブル、ストリングスの心躍るサウンド、片岡の歌にさらなる奥行きを添えるコーラス隊なども加わって、大編成で贅沢なライブの始まり。交差する幾筋ものレーザーライト、テンポよく切り替わっていくカメラワーク、それらすべてが集まって、sumikaというエンターテインメントを創り上げていく。

sumika/オンラインライブ「Little Crown 2020」
sumika/オンラインライブ「Little Crown 2020」

大編成でのアンサンブルがとにかく素晴らしく気持ちいいライブだった。しかもそれを画面越しに独り占めしている感覚もあり、「Little Crown」の新たな楽しみ方が提示された夜だったとも思う。アンサンブルそのものが、まるでサーカスように、せめぎあい、心地好い緩急を見せ、見事な音像を描き出す。片岡も序盤から「まだ3曲しかやってないのに充実感がすごい」とつぶやいたほど、演奏しているメンバーたちもとにかく楽しそう。そして、この日のライブの場所として、なぜこのサーカス会場を選んだのか、片岡はその理由をしっかりと語ってくれた。詳細はぜひとも、実際の片岡の語りで感じ取ってほしいところだが、世の中のムードが沈んでいる時にこそ、エンターテインメントは誰かの心を癒したり、笑顔にしたり、人々の気持ちに寄り添うものであるということに、sumikaは真正面から向き合ったのだと思う。それは今回のオンラインライブのみならず、コロナ禍で人々の生活を支えてくれている医療従事者や、困難を抱えるエンターテインメント業界に、いち早く支援の行動を起こした「Dress Farm 2020」もそうだ。その芯の通った、血の通った取り組みは、sumikaならではのもの。昔から大衆を楽しませてきたサーカスとsumikaの音楽。そこに共通して流れるエンターテインメントの哲学。それを思うとまたこの日のライブがスペシャルなものに思えてくる。

そんな思いで聴く“イコール”は、とにかく胸に沁みた。荒井智之(Dr・Cho)の心ときめくような、跳ねるようなおだやかなドラムに、なめらかなストリングスのサウンドが重なり極上のアンサンブルを響かせる。片岡の伸びやかな歌声に小川のコーラスが寄り添う。黒田と片岡のギターの音の重なりも、まぶしい光を放つように美しい。そして“ファンファーレ”は、ベーシックなバンドサウンドの編成にコーラスの声が幾重にも重なって、物語を力強く描き出すような、エモーショナルな感動を生む。

中盤、ステージが暗転すると、各所にランタンが置かれ、そのほのかな灯りが、これまでとはまた違った景色を映し出す。小川の鍵盤の音だけをバックに片岡がやさしく歌い出す“ゴーストライター”は、幻想的ですらあった。夜の部屋で受け取るギフトのように、その歌世界に引き込まれる。
一方で、アカペラの美しいハーモニーで始まる“Summer Vacation”の、気持ちのいいフィーリングに思わず体が揺れる。傘を手にした女性ダンサーが視覚的にもリズムを生み出し、静かにうねるベースが夏から秋へと移ろうこの季節にぴったりのグルーヴを生み出していた。歌い終わった片岡は、思わず「最高」と一言。
「夏をまだ終わらせたくない」と言って始まった“絶叫セレナーデ”の華やかなホーンセクション。sumikaらしいポップネスがはじけて、ここからアッパーな展開でたたみかけていく。“MAGIC”の《イヤフォン越しでかけてよ/(It’s a Magic!)》の歌詞がこんなにピタリとはまる夜もない。思わず椅子から立ち上がりたくなる。この音楽の祝祭感。この曲が終わったあとのメンバー4人のやりとりが、すべてを物語っている。

sumika/オンラインライブ「Little Crown 2020」
sumika/オンラインライブ「Little Crown 2020」
sumika/オンラインライブ「Little Crown 2020」

片岡「楽しいな。最高だ。今日もう思い残すことがなさすぎるんだけど」
黒田「ぜいたくな1日だなあ」
荒井「今夜はどうにかなっちゃいそう」
小川「どうにかなっていいよ、これはもう(笑)」

終盤、片岡がこのコロナ禍で考えていたことを言葉にした。時間だけがたっぷりあって、物事をネガティブに考えすぎてしまう日々があり、でも、この「Little Crown 2020」を開催すると決めて、余計なことは考えずに目の前のことだけに集中すると決めたこと。続けて「目の前のことだけを精一杯やって、汗だくになれる今が最高に幸せです。本当に今日、出会ってくれてありがとう」と、しっかりカメラ目線で伝えた。今の状況下で、誰もが抱える不安。その思いを受け止めるように、そして自分自身にも語りかけるように“明日晴れるさ”を歌い上げた。《今から僕が歌うこの歌は/世界を救うようなスケールではなくて/現在目の前で戦うあなたの/幸せを只 願う歌だ》という歌い出しが、ストレートに耳に染み込んでいく。シンプルなバンドサウンド。時折感情が強く表出するような黒田のギターストローク。片岡の歌声と小川の歌声が、それぞれを支え合うように、それぞれの背中を押し出すように、エモーショナルに響いた。そして、消え残る余韻をすべて見送るようにして静寂が訪れると、「sumikaでした。ありがとうございました」とステージを去っていった。

アンコールに応えて出てくるまでの時間も、この日のサーカスの雰囲気を活かした素敵な演出だった。ピエロと片岡のサイレントの動きでのやりとりが粋で楽しくて、これもまたオンラインだからこそ細部まで味わうことのできる演出だと思った。そして披露したのは“雨天決行”。片岡は「雨が降っても槍が降っても、オレたちは続けていくから」と告げると、さらに絶叫に近い声で「絶対に、必ず、もう1回会おうね!」と叫んだ。速い8ビートが、《やめない やめないんだよ まだ》という覚悟を鼓動のように刻みつけていく。すべての楽曲を演奏し終えたメンバー4人は楽器を置いてステージ中央に集まって、最後に片岡が「ほんとに元気でいてよね」と画面の向こうにいる「あなた」に語りかけた。
終演後に流れたエンドロールには、この日会場入りしたメンバーの様子や、セッティング、サウンドチェック、カメリハの様子などが映し出されて、どの場面にもとびきりの笑顔があって、チームsumika全員がこの日を全力で楽しんでいたことをうかがわせる。始まりから終わりまで、見事なライブエンターテインメントとして完成していた。

このオンラインライブは、見逃し配信で9月27日(日)23:59まで視聴可能とのこと。サーカス会場で演奏するsumikaのステージはとても貴重なので、見逃した人もこれはチェックしたほうがよいと思う。
さらに、sumikaのYouTubeチャンネルで、急遽メンバー4人によるアフタートークも配信されるという情報もあり、こちらもあわせて楽しみたいところ。sumikaはいつでもエンターテイメントとしての音楽の底力を観せてくれる。今回の「Little Crown」はその真髄をたっぷりと堪能できたライブだった。(杉浦美恵)

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